弐百伍拾壱.シルクロード
俺「まあ、いいです。それよりも、そろそろ祭りのパレードの時間が近づいてると思うのですけど、人間界を見るのはどうすればいいのかしら?」
別雷(ふむ。それならこちらに座るのじゃ)
俺「……」
別雷(えっちなことはせんわ!)
それでも信用できないので、別雷からは大国主一人分の間隔を空けて、別雷に指されたとおり建物の縁側に腰を掛けた。雪は俺の隣、別雷からは反対側に座らせた。
別雷(ほれ)
そう言って別雷が指を振ると、建物の前の地面が光って上賀茂神社の前の様子が映し出された。
俺「まだ来てないみたいね」
別雷(それじゃあ、時間になるまでもう少し話でもしようかの)
そう言いながらさり気なく腰を浮かせて俺の方にじりじりと近づいてきたので、両手で思いっきり突き飛ばしてやった。
別雷(ブッ)
見事に宙を待って周囲を囲む回廊に突撃した別雷。
別雷(まだ何も触っとらんのに)
俺「これから触る気だったでしょ」
別雷(お主、心を読むのか!)
俺「……」
どうして神さまってのはこんなのばっかなんだろうか。
俺「それはともかく、時間が来るまで話をしてるっていうのは悪くないわね。じゃあ、一つ質問なんだけど、世界旅行に出かける神さまって珍しいの?」
別雷(そんなことはないぞ。ついこの間も、敦煌の屋台で焼き肉を食べておった八幡にあったばかりじゃからな)
俺「八幡って八幡大菩薩?」
敦煌ってシルクロードだっけ? 焼き肉の屋台なんかあるんだ。
俺「八幡大菩薩も隠居してるの?」
別雷(あやつはそんなに歳はとっておらんよ。たまっている有給と代休をまとめて消化中だと言っておった)
俺「へー」
別雷(なんでも200年くらい休暇がたまっておったとかで、まだ後100年も残っておると言っておったな)
ちょっと待て。何をどうしたらそんなに有給や代休が貯まるんだ!?
別雷(他に旅行といえば、イザナギのところの夫婦が月旅行に行ったまま、帰ってくる気配もないな)
俺「月!?」
別雷(まあ、もしかしたらそのまま銀河系旅行に乗り出してるかも知れんけどのう)
うーん。さすが天照やスサノオの親というところなんだろうか?




