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弐百参拾伍.ハッピーバースデー

 俺『うわぁ、ちょ、天照、止めろっ』


 ぺろぺろ


 天照『ろして?』

 俺『……ちょっと変態っぽい』

 天照『…………』


 天照は俺の指を舐めるのを止めて、俺の手を両手で握ったまましばらく硬直していた。ちょっとひどいことを言ったかな?


 天照『じゃあ、もっと別なものを舐めてあげようか?』

 俺『いらんっ!』


 俺はそう言うと、天照の肩を掴んで大きな白いものに向かって勢い良く投げつけた。天照は全ての物理法則を無視する形でぶつかる直前に空中に静止して、顔だけで俺の方を振り返った。


 天照『ちょっと、せっかく作ったのにひどいよ』

 俺『それは一体何なんだ!?』

 天照『ケーキだよ。姫ちゃん1歳のお誕生日なんだよっ』

 俺『誕生日……?』


 言われて気づいたが、確かに俺がこっちの時代に来たのは去年の卯月の満月の日だった。ということはもう1年もこっちにいることになるのか。


 俺『あんまり祝われても嬉しくない』

 天照『えー。あたしと姫ちゃんの大切な記念日なのに』

 俺『ちょっと待て。今、それはケーキって言ったな?』

 天照『言ったよ?』


 俺は素早く八咫烏の羽を装着すると、縁側から空へと舞い上がった。


 上から見てみると……、確かにそれはケーキだった。俺の離れの建物の半分くらいの大きさはありそうな、いちごショートケーキだった。なんかもう、一体何が何やら。


 俺『こんな大きなケーキ、どうしろって言うんだよ』

 天照『もちろん食べるんだよ。そこに座って。あーんしてあげるから』

 俺『いや。無理無理無理。物理的に無理』


 こんなに食べたら俺の身体が風船みたいに膨らんじゃうよ。


 天照『あたしと姫ちゃんの甘ーいラブラブスイートハッピーバースデー』

 俺『聞けよっ!』


 話を聞く気のない天照のことは諦めて、地上に下りた俺はケーキに手を当てて早口言葉のような呪文を一気に唱えた。もう忘れたかもしれないけれど、衛府太刀を小型化した時に使った例の詠唱時間の制限のきつい魔法だ。一応、装備品が対象の魔法だが、手に触れてれば装備品だよねということで。


 さすがに魔法の扱いにも慣れたので最初の時とは違って1発で成功させて、家のように大きかったケーキは普通にお店で売っているショートケーキのサイズになった。


 天照『ああーっ。せっかく作ったのにー』

 俺『だって、邪魔だし』

 天照『ううー。しくしく』


 天照がOTZの格好で嘆き悲しんているが、俺には今日はやらなけなればならないことがある。中納言の骨折を直さなければ。

現実世界では2年以上経ちましたが、物語世界でもようやく1年経ちました。


というわけで、姫ちゃんにお誕生日プレゼントをください。そして私にもおすそ分けをください。

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