弐百参拾.行方不明
大国主(神力を節約して時間転移する方法はいろいろあるんです。なにせこれまでの試行錯誤がありますからね)
そう言って大国主は胸を張ってみせた。その瞬間、服の隙間から大国主がかなり際どいロリ萌えTシャツを下に着ているのが見えてげんなりする。
俺『さっさと逮捕されてしまえ』
大国主(ひどっ)
どうせこれまでの試行錯誤というのは、そういうグッヅをいかに効率よく転移させるか試してきたとかそういう話に違いないのだ。
まあ、大国主の性癖は今に始まったことではないので、さっさと流して次に行こう。
大国主(でも、今やりたいのは普通の物質の転移ではなくさらに高度な魂の転移なので、神力を節約するテクニックがほとんど使えないんです)
俺『魂の転移……』
大国主(しかも呼び寄せるほうじゃなくて送り届ける方は、向こう側での魂の器を準備しないといけないので、余計に神力を消費します)
俺『うーん』
大国主(ちょっと荒業で、向こうにいる僕に手伝ってもらうという手もあるんですが……)
俺『あっ、なるほど!』
大国主(僕が2人でも神力がまだ全然足りないので)
うーん。惜しい。というか、大国主が2人よりも多いなんて天照の神力ってどんだけあるんだよ。
俺『そうだ! 現代の天照に手伝ってもらえばいいんじゃないか?』
なんでこのアイデアに気づかなかったんだろう。これで万事解決じゃないか! やだ。俺ってもしかして天才?
大国主(そう思ったのですが、実は現代の天照は行方不明みたいなんです)
俺『え? なんで?』
大国主(分かりません)
大国主は困った顔でそう言った。
天照『姫ちゃん、愛してるー!』
と突然、天照が背後から襲いかかってきた。酒臭い……
俺『ちょ、天照、離れろーっ』
月☆読(くーっ。お姉さまっ。離れてくださいっ)
天照『うるさーい。大体、月☆読はそうやっていっつもいっつも小言ばっかりなんだよー!』
月☆読を酔い潰す作戦のはずが、どうやら天照自身が先に酔いつぶれたようだ。まだ正気を保っている月☆読が天照の暴言に泣きそうな顔になっている。
月☆読(そんな。私はいつもお姉さまのことだけを思って)
天照『とにかく、あたしは姫ちゃんのことが好きなの。だから放っておいて!』
月☆読(天照大御神ともあろうかたが、そんなただの人間のことに必要以上に関わっては……)
天照『姫ちゃんはただの人間なんかじゃないよっ。もう、月☆読なんかどっか行っちゃえっ』
ブンッ、バコーン
月☆読(あれーーーー)
怒った天照がフルスイングした一升瓶が月☆読に当たって、瓶が割れるかと思いきや月☆読のほうが空の彼方へと特大ホームランになって飛んでいった。天井に大穴を空けて。それにしても、随分丈夫な一升瓶だな。