弐百弐拾捌.薔薇の節句
それにしても、今日は3日だから来る時期じゃないと思ってたんだけどな。
ドタドタバタバタ
天照『姫ちゃーん』
俺『何しに来た、天照』
天照『寂しくなったから会いに来たよー』
俺『月☆読はどうした?』
月が早く沈む時期は月☆読が夜の間、天照を監視しているはずなんだが。
月☆読(ここにいます)
俺『うぉっ』
突然、背後から声がして、俺は心臓から口が飛び出るかと思った。いつの間に後ろを取ったんだ!?
月☆読(ちょっとここは狭いですね。このふすま、外してもいいですか?)
俺『え、いいけど、何するつもり?』
すせり『ふふー。見てのお楽しみ』
俺『あれ、すせり姫まで、なんで?』
いつの間にか天照と月☆読だけじゃなくてすせり姫まで上がってきていた。っていうことは、豚もいるのか?
大国主(ちょ、誰か手伝って……)
少し遅れて大国主の声が聞こえたと思ったら、それは荒い息遣いの動く段ボール箱の塊だった。
大国主(ダンボールのせいで前が見えない)
俺『…………』
大国主が持っていた段ボールの荷を解くと、それは11段飾りの雛壇だった。しかも、すせり姫の手作り。この人は漫画も描けるけど人形も作れるのか!
すせり『よし。完璧かもー!』
出来上がりを満足げに眺めるすせり姫だったが、その後ろ姿に俺は頭を抱えていた。
何故、お内裏様が2人もいる?
何故、お雛様がいない?
何故、3人官女が男装している?
俺『今日はひな祭りじゃないのかっ!』
すせり『何言ってるの。今日は薔薇の節句でしょ?』
俺『桃の節句だよっ。しかも薔薇の意味がおかしいしっ!!』
すせり『大丈夫。桃だってバラ科だよ』
俺『大丈夫じゃないしっ!!!』
前から思ってたけど、やっぱり、この人変だよ。突っ込みが激しくなるほど、目がキラキラしてくるよ。