弐百弐拾漆.艦○れ
またやってしまった。
目が覚めて、見慣れた天井を見上げ、自分の状況を理解してから、俺はすっかり落ち込んでいた。
こんなに落ち込んだのは、裳着の祝宴の歌会の時に魅力を暴走させて居合わせた公卿や貴族をことごとく失神させた時以来だ。
今日の昼間の顛末は雪から簡単に報告を受けた。
最近、天照から加護を授かっていた雪は、俺の魅力に対する抵抗力も高まっていたので、だだ漏れになっていた魅力に至近距離から直撃されても失神することなく、俺を隔離して他の人々を介抱した後、酔いつぶれた俺を家まで連れて帰ってくれたらしい。
本当にできた女房だ。
それに引き換え俺は本当に情けない。
俺「はぁ」
墨「姫さま」
ため息をつく俺にすっと近寄って猫のように頭をすりつけてきたのは墨だ。猫のように、というか猫幼女だけど。
そんな墨の頭を、というか耳や耳の間を撫でてやると機嫌良さそうにしている。それを見て、俺まで気持ちが落ち着いてくるから不思議だ。
雪「かぐや姫さま」
食事の膳を下げた雪が戻ってきた。あまり手を付けなかったから申し訳ない。
俺「ごめんね、あまり食べなくて」
雪「そんなことありません。それよりもう大丈夫ですか?」
俺「うん。体調はいいみたい」
あの時、俺は気がついていなかったが結構な量のお酒を飲んでいたようだ。そのせいか、起きたときはまだ倦怠感があったが、さすがにバカみたいにステータスの高い俺の身体からは、時間とともにお酒も綺麗に抜けて二日酔いにもならなさそうだ。
俺「私って最低だね」
雪「そんなことありません!」
俺「ううん。最低だよ。絶対に二度とやらないって思ってたのに、またやっちゃったよ。これでみんな私のこと嫌いになったよね」
雪「いえ、それはむしろ逆というか、皆様、また、かぐや姫にお酒を振る舞いたがっていましたけど……」
俺「え?」
雪「もちろん、丁重にお断りしました!」
そっか。そんなに嫌われてなかったのか。よかった。でも、ひとつ間違えたら死人が出てたわけで、というか、雪がいなかったら多分本当に誰か死んでたと思うし、本当に二度とこんなことにならないようにしないと。
ドタドタバタバタ
雨(ご主人さまっ、レーダーに反応あり。3時の方角!)
と、突然、KYに定評のある雨が意味不明な事を口走りながら足音を響かせて駆け込んできた。
口走っている内容がアレなのは、最近、巨乳キャラがメインの萌え百合日常系海戦二次創作漫画(オリジナルは携帯ゲーム)を間違えて買った豚(大国主)から貰ったので、きっとちょうどハマっているところなんだろう。
それにしても、足音を立てて走るなんて男の娘の風上にも置けないやつだな、本当に。
俺(お仕置き)
雨(えーっ。なんでっ!)
月曜日は休日ですので、次回更新は水曜日です。