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弐百弐拾伍.枯れ尾花

 明子「って、何を言っているんでしょうね、私は」

 俺「私が攫ってあげてもいいよ」

 明子「へっ?」

 俺「でも、本当にそれでいいのか、ちゃんと考えてからのほうがいいと思う。相談にならいくらでも乗って上げるから」

 明子「……ありがとう。もうちょっとゆっくり考えてみます」


 確かに攫っちゃえば入内の話はなくなるしな。本人失踪ということで。でも、そんなことをしたら仲がこじれるのを嫌がっている中宮とも連絡が取れなくなっちゃうけど。それでもそうしたいなら明子はもっと別なことで心を痛めているということになるか……


 まあ、何にせよ、明子が打ち明けてくれないことには、話にならない。ここは明子の出方待ちだ。


 俺「そういえば、この間の手紙にあった幽霊が出るって話、本当?」

 中宮「何の話をしているんですか?」


 ちょうど俺が話を変えたところで、中宮が話に交ざってきた。


 俺「関白さまの屋敷に最近幽霊が出るそうなんれすよ」

 中宮「まあ、本当ですか?」

 明子「そういう噂があるんですわ。私は信じていないのですが、使用人たちのなかではかなり噂になっているみたいです」

 寛子「失踪中の関白さまの屋敷で幽霊騒ぎだなんて不吉ですわね」

 明子「お兄さまは失踪なんてしていません」


 さらについでに寛子まで来た。おいおい、みんな、曲水の宴の方はどうなったんだよ。


 という俺も、さっきから雑談の合間に歌を詠んで盃を空けている。かれこれ結構呑んだかも。


 中宮「明子さんはどうして信じていないの?」

 明子「幽霊は人の怨念が形になったものでしょう? お兄さまは人から恨まれるようなことはしていません」


 清々しい言い切りだな。権力者なら人の恨みの1つや2つくらい買うこともありそうだけど、そんなことあるわけないと心から信じている様子だった。


 寛子「関白さま自身の生霊かもしれませんよ」

 明子「そんなこと、あるはずないですわ」

 寛子「でも、関白さまが京を離れて随分になりますわ。旅が順調ならそろそろ戻っていらっしゃってもおかしくないのではないかしら」

 俺「まあまあ、寛子しゃんも明子しゃんも、落ち着いて。明子さんのところには関白さまからの連絡は届いているんれしょう?」


 寛子と明子の間が険悪になりそうだったので、慌てて手に持った盃を一気に飲み干して、2人の間に割り込んだ。


 明子「……」

 俺「明子さん?」

 明子「ふぁっ、あ、そ、そうです。ちゃんと届いてますわ」

 寛子「そ、そう。じゃあ、心配しすぎでしたわね」


 どうやら丸く収まったようだ。それにしても、2人とも顔を赤くして、お酒の飲み過ぎじゃないかなぁ。明子とか、ちょっとぼーっとしてたし。


 中宮「本当に、関白さまの方は目処は立たれたんでしょうか。お兄さまがいつも気にしているのですけど」

 俺「中納言しゃまが?」

 中宮「はぁっ。お、お兄さまの課題は燕の子安貝ですから、燕が巣作りを始めるまで何もできませんの。それで、内心は焦っているのだと思います」

 俺「なるほろー」


 なんだ、中宮まで顔が真っ赤じゃないか。全く、みんな飲み過ぎだよ。

今日は13日の金曜日でした。急いでチェーンソーを用意しないと。


月曜日は祝日ですので、次回更新は水曜日になります。

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