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弐百弐拾肆.憂き世離れ

 俺「その前に、どうして明子さんは入内したくないの?」

 明子「それは……」

 俺「帝がかっこ悪いから? 確かに背は低いし顔もあんまり良くないけど」

 明子「いえ、そういうわけでは」

 俺「じゃ、やっぱり中宮さまのためなの?」

 明子「はい、そうなんですが……」


 どうにも明子の話は要領を得ない。女御になることで中宮との関係が悪化することを気にしているようなのだが、それだけじゃなく他にもまだ何かあるような気がするんだよな。


 明子「あ、竹仁さまはお元気ですか?」


 雲行きが怪しくなったと思ったのか、明子は話を変えてきた。


 俺「え、ああ、うん。元気元気」


 ていうか、目の前にいるのがその竹仁本人なんだけどね。


 竹仁といえば、明子が入内を渋る理由の1つには竹仁の存在がありえるとも思ったのだが、明子が入内を渋っていたのは竹仁に会う前からだから、それだと話の整合がとれない。


 俺「そういえば、明子さんは、あの、お兄さんとよく連絡を取ってるみたいだけど、どういう関係なの?」


 竹仁は俺の兄という設定なのだから、お兄さんと呼ばないといけないのだ。だけど、呼び慣れていないせいでどうにもぎこちない。


 明子「今のところは友人の1人ですわ。……本当はもう少し踏み込んだお付き合いをしてみたいのですけど」

 俺「ふ、踏み込んだ!?」

 明子「逆に竹仁さまは私のことをどうお考えになっていらっしゃるんでしょう?」

 俺「え?」

 明子「かぐや姫さんならお兄さまの竹仁さまから何か聞いているかと思いまして」

 俺「あ、ああー」


 びっくりした。一瞬、明子が竹仁の正体が俺だと知っているのかと思った。それにしても、ここはなんて答えたらいいんだ? これまで明子の誘いを断ってきてるわけだし、でも、あんまりひどい答えは返せないし。


 俺「明子さんのような高貴な方がどうして自分のようなもののことをそれほど気に掛けるのかと不思議がっていましたよ」


 うん。これは模範解答じゃないだろうか。嫌っているわけではないことを主張しつつ、これまでの誘いを断ってきた理由も説明できている。


 明子「そうですか。逆に私は、竹仁さまのように自由な方が羨ましいです。この世の権力に縛られることなく、心のままに日々を送る。私もそのように生きてみたいです」

 俺「そうなんだ」


 明子から見ると竹仁ってそんな風に見えてるんだ。確かに宮仕えしていないくせに教養人だし、生活臭がしないところが浮世離れして見えるのかもな。でも、ちょっと美化し過ぎなんじゃ。


 明子「実はね、私、竹仁さまにさらわれてしまいたいと思うことがあるんです」

 俺「えっ?」

 明子「もちろん、そんなことはただの空想なんですが、なぜだかわかりませんが、竹仁さまに初めて会った時にこの方はそれができる方だと思いましたの」


 うーむ。女の直感、恐るべし。確かに竹仁なら、というか俺なら、その気になればそのくらい簡単なことだ。


 というか、明子、ちょっとぶっちゃけ過ぎだよね。もしかして酔っ払ってる?

「浮世」は本来「憂き世」で「つらいこの世」という意味だったのですが、いつの間にか「つらい」というニュアンスが消えてしまいました。

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