弐百弐拾弐.おばK
明子の手紙の残りには、中納言の課題の進捗状況についての質問と、最近関白の屋敷に出る幽霊の話について書いてあった。
墨「幽霊!?」
幽霊というのは留守にしているはずの関白の私室に、夜中、人がいる気配がすることがあるというのだ。灯りが点いているのを見たという証言もある。
墨「ひー。幽霊、怖いよー」
冷静に見ると猫娘という妖怪の一種にしか見えない墨が幽霊を怖がってぶるぶる震えている様子は萌える。
俺「墨、かわいー」
ぎゅうっっ
思わす墨を抱き寄せて、墨の顔を俺の胸に埋めるようにギューッと抱きしめた。
俺「きっとね、志半ばで倒れた関白の無念の心が未だに成仏できなくてこの辺りをうろついているんだよ。蓬莱の玉の枝ー、蓬莱の玉の枝ーって夜な夜な叫びながらさまよい歩いてるんだね」
墨「んんーーーっ」
さらに墨を怖がらせるために、耳元で囁くように幽霊の話をしてやると、墨は手足をじたばたさせて嫌がっている。そんなに怖いのかー。
雪「あの、かぐや姫さま、そろそろ離さないと墨が窒息してしまいます」
雨(墨だけずるいっ! 僕もぱふぱふしてほしいっ!)
俺『お前はいつまでも石鹸作ってろ』
雨(ガーン)
墨を解放してやると、涙目になっていた。うーん、ぺろぺろしたい。
ところで、墨は根の国まで行って帰ってきて幽霊より怖いもの見てきたはずなんだけど、なんで幽霊がそんなに怖いのやら。
とにかく、幽霊の話は面白いけど、明子の入内とは何の関係もない。
後は中納言の課題の進捗状況なんだけど、これも無関係っぽいな。なんだかんだ言って関白の妹だから兄のライバルの状況は気になるってことなのかな。
雪「中納言さま……?」
俺「ん? どうしたの?」
雪「……、いえ、何か引っかかる気がしたんですが、気のせいだと思います」
雪はまだ明子のことが気になるのか首を傾げていたが、俺はそろそろ返事を書いてしまおうと思う。入内の件はすぐにアイデアが出なさそうだからひとまず保留にして。
竹仁宛のお誘いはどうやって断ろうかな……
というわけで、先に書きましたようにひとまず3話、投稿しました。次話はとうとうひな祭りの予定ですが、執筆にもう少々お時間をください。よろしくお願いします。