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弐百弐拾壱.関白の妹の人生相談

 雪「そう言えば、明子さまからお手紙が届いていました。ご覧になります?」

 俺「うん。見せて見せて」


 石鹸のことは、あとはかき混ぜるだけだから雨に全部任せてもいいよね。


 ということで、俺は石鹸づくりを雨に任せて、明子からの手紙に目を通すことにしたのだ。


 雪「明子さまからのお手紙ですが、1通は竹仁さま宛になっています」

 俺「ああ」


 賀茂臨時祭で竹仁とかぐや姫が兄妹だと知った明子は、以来、ちょくちょく竹仁宛の手紙を俺のもとに届けてくるようになった。


 内容は当たり障りのない世間話が中心で、最後に「また会いたいです」と書かれているのが常だった。


 女御に入内する話が進んでいる最中に他の男と頻繁に手紙のやり取りをしているのも人に知られたらまずそうなのに、直接会ったりしたら大変なことになるじゃないかと思うのだけど、明子はそもそも入内の件について乗り気じゃなかったので、ダメになるならなってしまえばいいと思っているのかもしれない。


 明子のことは応援したいけど、竹仁が騒動に巻き込まれるのはまずいので、会いたいという件については、毎回やんわりと断っているが明子はなかなかしつこくて、諦めずに毎回誘ってくる。


 今度、夜中にこっそり行ったら納得してくれたりするのかな。


 雪「もう1通はかぐや姫さま宛です」


 明子からの手紙は竹仁宛の他に、もう1通来ていた。明子とはかぐや姫としても文通しているのだ。


 かぐや姫宛の手紙の方は、竹仁宛のに比べてもう少し込み入ったことまで書いてある。近況報告はもちろん、相談事やお願いが書いてあることもある。


 今回の手紙には、明子が入内じゅだいするという話は、関白が戻らないのでその後特に何も進展がないということが書いてあった。


 進展がないということは、問題先送りではあるが、明子にとって悪いことではない。そこで、この間に明子は入内をなんとか阻止したいようで、何かいい方法はないだろうかと相談が書かれていた。


 俺「いい方法って言ってもね」

 雪「明子さまですか?」

 俺「うん」


 そもそもこれは関白が中心になって進めている関白家と天皇家の縁組で、中宮を中納言に押さえられてしまっている関白としてはどうしても進めなければいけない縁組なのだ。そう簡単にどうにかなる話ではない。


 いくら関白から求婚されているといっても、俺が普通に頼んだくらいでどうにかなる話じゃないよなー。結婚と引き換えにすればなんとかなるかも知れないけど、それはさすがに……


 雪「明子さまはどうして入内されたくないんでしょうね?」

 俺「ん? どういうこと?」

 雪「あ、いえ、貴族の娘というのは、できるだけ身分の高い方と一緒になりたいと思うのが自然だと思っていましたから、そこまで帝をお嫌いになるのが不思議だと思いまして」

 俺「それは中宮との友人関係にひびを入れたくないからじゃないの?」

 雪「友情のためだけに、本当に女の幸せを捨てようと思うのでしょうか」

 俺「何か他に別の理由があると?」

 雪「わかりません。他には何か書かれているのですか?」

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