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弐百弐拾.けんか

前話の終わりにそろそろひな祭りと書きましたが、その前に小話が3話だけ入ります。

 雨(やっぱ、偉い人は加護の強い人が多いのかな)


 右大臣が玉艶の毛皮を燃やした翌日、不意に雨がそんなことを言った。


 俺『何の話?』

 雨(ん? 昨日、誰か来てたでしょ。あれ、大国主の加護を受けてたじゃん)

 俺『え? そうなの?』


 そうなんだ。右大臣って大国主の加護持ちなんだ。へー。


 雨(ご主人さま、気づいてなかったの?)

 俺『気づくも何も、俺は加護を持ってるかどうかなんて分からないよ』

 雨(え、じゃあ、去年会った中納言とか言うのが、僕の加護を持ってることも知らない?)

 俺『マジで!?』


 あの常識人の中納言がこの変態の加護持ちだって?


 俺『それは中納言が可哀想だ』

 雨(どういう意味だよっ)

 俺『言葉通りだ』


 雪「かぐや姫さま」

 俺「ん、ああ、いい感じだね。じゃあ、雨の番」


 ところで、雨が変なことを言い出したので話がそれてしまったが、今は例の玉艶の毛皮の灰を練りこんだ石鹸づくりの最中なのだ。燃えてしまった毛皮だが、まだ灰には美肌効果が残っているのでこうして石鹸に練り込んで有効活用しようとしているのだ。


 え? 往生際が悪い? だって玉艶なんだよ、玉艶。


 雨(ええっ、また? さっきやったばっかじゃん)

 俺『何言ってんだ。ちゃんと順番通りじゃないか。俺、雨、雪、雨、墨、雨、俺……』

 雨(何回僕が出てくるのさっ)


 石鹸づくりは基本的にはオイルと水酸化ナトリウム水溶液を混ぜて放置するというお手軽製法(CP法というんだそうだ。すせり姫に教えてもらった)なのだが、オイルと水酸化ナトリウム水溶液を混ぜるところが滅法大変なのでみんなで分担してやっているところなのだ。


 俺『ちゃんと心を込めろよー』

 雨(ううっ。どうせできても僕には使わせてくれないのにっ)


 雨は口ではこんなことを言っているが、おしおきをされたい変態なので理不尽なシチュエーションは大好物なはずなのだ。俺としてはその期待に全力で答えているだけなのだ。


 なんて使い魔思いのご主人さまだろう。


 決して道具作りの上手い雨を、その性格を逆手に取って、いいようにこき使っているのではない。断じて。


 俺『あ、そろそろ灰の方も入れといて。全体に均一に混ざるように注意してね』

 雨(鬼ーっ)


 ちなみに、作っている石鹸の量は、()()一杯分である。この際だから、一生分の石鹸をいっぺんに作って灰を使い切ってやろうというのだ。


 雨(うー、腕が重いよー。重いよー。重いよー。ふふふ)

余談ですが、手作り石鹸づくりで進行する化学反応は「鹸化けんか」と呼ばれるそうです。

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