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弐百拾漆.美少女の涙

 爺「かぐや姫、課題の品を持ってくれば結婚すると言ったのはあなたですよ。それをいまさら反故にするというのは信義にもとります」

 右大臣「かぐや姫殿。私もここまで来ては後には引けません。今日はお返事をいただくまでは変えることはできません」

 婆「かぐや姫」


 3人から詰め寄られて逃げ場を失った俺は、消え入るような声で言った。


 俺「でも、これは火鼠の裘ではありません」


 俺の言葉に一瞬、場の空気が凍りついた。


 右大臣「そ、そんなはずはありません。これは確かに交易商人から直接買い付けたもの……」

 爺「かぐや姫、いい加減なことは……」

 俺「いい加減ではありません。これは火鼠の裘ではないんです」


 これは火鼠の裘ではない。確かに本物の魔法具だが、全く別の魔法具だ。


 右大臣「何を言うんです。この毛並み、この艶、この色合い、どれをとっても本物ではないですか」

 俺「それでもこれは火鼠の裘ではないんです」

 右大臣「……そこまで言うのなら、その証拠を示してください」

 俺「証拠は……」


 これが本物でないことを証明することは簡単だ。火をつけて燃やしてみればいい。火鼠の裘なら燃えるはずがないが、これはきっとよく燃えるだろう。


 でも、そんなことをしたらこの衣が使えなくなる。これは火鼠の裘ではないけれども、「玉艶の毛皮」という別の魔法具で作られた衣で、正直俺にとっては火鼠の裘なんかよりもはるかに欲しいアイテムなのだ。


 玉艶の毛皮とは、その毛皮で毎日肌をこすると、一切の肌トラブルなし、シミなしシワなしクスミなし、ニキビもなければ乾燥肌もアトピーもなくなって、つやつやもちもちのベビースキンが実現するという夢の魔法具なのだ。


 その存在を知った俺は、以前からどうにか手に入らないかと密かに探していたのだが、まさかこんなところで出会うとは。


 右大臣「証拠は?」

 俺「……これは「火鼠の裘」ではなくて「玉艶の毛皮」というものです。火鼠の裘なら絶対に燃えませんが、玉艶の毛皮なら簡単に燃えてしまいます。でも、玉艶の毛皮は私が以前から探していたもので、もし可能なら燃やさずに譲っていただきたのです……」


 俺が目に涙を浮かべながら訴えると、右大臣はさすがにたじろいだ。「必殺、美少女の涙」作戦だ。


 右大臣「し、しかし、その話が本当だという証拠が……」

 俺「おねがいです。どうか……」

 右大臣「いや、そうは言っても……」

 俺「お、ね、が、い」

 右大臣「…………」


 いける。この勝負、勝てるかも!?

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