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弐百漆.もういくつもふると

 年末の追儺召ついなめし除目じもくでは、中納言の言葉通りに爺が三位に昇進した。信じられないが、これで爺はとうとう公卿だ。なんてこった。


 公卿としてはこの屋敷は手狭なので、そのうちにどこか広いところへまた引っ越すことになるようだが、俺としてはこの屋敷が気に入っているので、爺が引っ越すことになっても俺はここに残っていたい。


 というか、いままでいろいろ仕掛けてきたものを全部外して、新しいところに設置し直すのが面倒くさい。


 という旨を適当にごまかしながら伝えたら、爺も俺と離れるのは本意ではないということで、今の屋敷を周囲に広げる方向でなんとかしてみるということになった。


 明けて元旦。寝正月とか言ってられないほど、宮中では元旦から 行事が目白押しだ。といっても、爺婆に関係あることばかりで、俺は特にやることはない。


 形式通りの正月の挨拶を爺婆と交わして、しばし歓談した後、俺は自室に引きこもった。


 床にごろごろ転がりながら、墨を抱っこしてもふもふの耳と尻尾を堪能する。


 墨「ふぁ、か、ぐや姫さまぁ、んんっ」


 墨は頭や耳や首のあたりを撫でていると、だんだん目がとろんとしてきて、頭のほうを俺にこすりつけるように体重を預けてくるのだ。


 それでもなお耳とかを指先でいじっていると、耳元で吐息を荒くしながら、尻尾をパタンパタンと揺らし始める。その様子がまたなんとも猫らしくて可愛らしいのだ。


 雨(ねぇねぇ、ご主人さま。それ、後で僕にもやって?)

 俺『断る』


 これは墨だから可愛いのであって、どうして女装趣味の変態ニートのそんな姿を見なきゃいけないんだ。罰ゲームかっての。


 雨(これを着せたのはご主人さまじゃないかっ。女装は僕の趣味じゃないよっ!)

 俺『人の思考を勝手に覗くな、この変態っ』


 とまあ、年が明けたからといって何かが変わるわけでもない。


 相変わらず墨は神だし、雨は変態だし、雪は、


 雪『みんな、お雑煮ができましたよ』


 俺の女房なのだ。えへへ。


 雪は相変わらず現代語と算数の勉強を続けていて、最近は結構複雑なことも現代語で話せるようになってきた。雪と現代語の練習をする時間は、俺にとって母語で話せる貴重な時間だ。


 さらに、最近は現代風の料理も独学で勉強し始めた。


 大国主の伝手つてで現代の料理本を手に入れ、覚え始めた現代語の知識で何とか解読し、材料を色々工夫して毎日レパートリーを増やすべく努力している。


 今日のお雑煮もそうやって作った一品だ。本当はおせち料理を作りたかったそうなのだが、2日間悩んだ挙句、今の雪の実力ではさすがに無理と泣く泣く諦めていた。


 俺「おいしいわ、これ」


 俺がそう言うと、雪は本当に嬉しそうににっこりと笑った。


 まさにそれは、俺が現代で食べていたような合わせ味噌ベースのお雑煮で、味噌は雪が仕込んで俺が魔法で発酵を促進させた、まさに俺と雪の合作なのだ。


 雨(うまうま。もぐもぐ。…………うっ)


 ジタバタジタバタ


 俺「でも、お餅が美味しいからって慌てて食べると喉に詰まって大変なことになるから、気をつけて食べなきゃダメだよ、雪」

 雪「え、あ、あの、かぐや姫さま……?」

 雨(うーっ…………)


 ヒクヒク……

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