弐百陸.お兄ちゃんだけど○さえあれば関係ないよねっ
明子「あのっ」
しかし、そこで俺を呼び止めたのは明子だった。
明子「お名前を伺ってもよろしいですか?」
俺「竹仁と申します」
明子「竹仁さま。……あの、どちらの縁者さまでいらっしゃいますか?」
俺「讃岐殿の」
明子「もしかしてかぐや姫さんのではありませんか?」
明子の口調からは、いい加減なことでは絶対に帰すつもりはないという意志が感じられた。その気になれば多少強引にでもこの場を切り抜けることはできると思うけど、明子は知り合いだし穏便に済ませたい。
俺「……これは誰にも言わないでいただきたいのですが……、私はかぐや姫の兄です」
明子「えっ」
雪「えっ?」
俺「妹に迷惑が掛からないように、普段は身分を伏せていますので」
明子「そうですか。通りで……」
明子はどうやらこの説明に納得してくれたようだ。前に話した時の印象から明子の口は固いと思うし、まあ、もしも漏れたとしてもさほど困ることもないはずだ。
そもそも、かぐや姫の兄なんてどこにも存在しないんだし、適当に白を切って通せばなんとでもなると思う。
俺「では、これで」
明子「あっ、お手紙は」
俺「はい?」
明子「お手紙はかぐや姫さんのところへ届ければ受け取ってもらえますか?」
俺「……分かりました。妹には、そう、伝えておきます」
まだ何か言い足りない顔をしていた明子だったが、話を長引かせたくない俺は振り切るようにその場を離れた。
……そして、また戻ってきた。
俺「あの、試楽の会場はどこでしたっけ?」
賀茂臨時祭編はこれで終わりです。これで、竹仁に中納言の他に明子にもフラグが立ちました。人間関係がカオスですね。
またしばらくお休みを頂いて書き溜めをしますので、よろしくお願いします。投稿再開の予定についてはブログの更新を確認してください。