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百玖拾捌.女の友情

 俺「私も男の人はちょっと」

 中宮「なるほど」

 明子「そういうことだったんですか」

 俺「ちっ、違うよ。私と雪はまだ……」

 中宮「まだ、だけどいつか、ですか?」

 明子「お兄さまも報われませんわね」

 中宮「全くですわ」


 ああ、2人とも誤解…………はしてないけど。でも、改めて言われるとなんか恥ずかしい。しかも、今気づいたけど、2人とも兄が求婚者だった。


 俺「あ、明子さんはどうなのよ。誰か気になってる人はいないの?」


 いたたまれなくなった俺は、ちょっと強引に話題を明子に振ってみた。


 明子「えっ、あ、えっとぉー」


 すると、なにやら明らかに怪しい反応が帰ってきたのだ。


 俺「あれー、どうしたの、明子ちゃん?」


 その反応にピンときた俺は、ちょっとしっとりと責めて見る。これ、絶対、好きな人がいるに違いない。


 明子「気になってるというか、あの、思うところはあるんですけど、でも、いろいろ難しいかなと。ははは」

 俺「あやしいなー。誰も聞いてないんだし、全部言っちゃいなよ」

 明子「……、兄から言われているんですが、私を女御にょうごにするという話があるんです」

 中宮「本当ですか?」

 明子「本当なんです、中宮さま」


 女御というのは帝の側室のことだ。明子が女御になるということは、中宮とは帝をめぐるライバル関係になるということを意味している。


 しかも、これは単に個人的な愛情の問題だけではなく、次の帝の外戚に誰がなるかという争いでもあるため、本人の意志とは無関係に周囲の思惑に踊らされてしまうという側面もあるのだ。


 中宮「ああ、ついにその時が来てしまいましたか」

 明子「私が女御になれば、中宮さまとの関係も今のままというわけにはいかないでしょうし、それに……」

 俺「それに?」

 明子「いえ、それに、兄と中納言さまの関係も余計に悪化するのではないかと」


 中納言というのは言うまでもなく中宮の兄のことだ。明子が女御になると、関白と中納言の間で次の帝を巡る争いが起きる可能性が高まるということは目に見えている。


 しかし、俺は明子が本当に言いたかったことはそれではないんじゃないかと思った。なんでそう思ったかというと、特に根拠はない女の勘なんだけど。


 中宮「まあ、運命に逆らうことはできませんわ。私たちは女ですから、殿方の決めたことにしたがって行くしかありませんもの」


 中宮は少しため息をつきながらそう言ったが、俺は自分だったらそんな簡単に諦めるのは嫌だと思った。


 女だからっていうだけで人生を諦めなければならないなんて不公平だと思う。男でも女でも自分の幸せを追求する自由くらいあったっていいじゃないか。


 もちろん、選択肢のない人生だってあるし、男だからって常に自由なわけじゃない。でも、だからといって、女だからという理由で人生の選択肢を初めから諦めなければいけないなんて嫌だ。


 俺「明子さん。頑張ってね。応援するからね」


 俺は思わず明子の手を握りしめてそう言っていた。もちろん、別にこの事態を解決するようなアイデアは何もないのだけれど、それでも応援くらいはしたいと思ったのだ。

公卿の実子が舞姫となっていたのは10世紀前半の事で、以後は配下の中流貴族の娘を選ぶようになったそうです。なので、時代設定が少しずれていたら、このエピソードは存在しなかったかもしれません。

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