百玖拾伍.同じ女として
天照『でも、大丈夫だよ。人間、誰でもいつかは誰かともっとすごいことまでするんだからさ』
俺『……、さすが経験者は言うことが大胆だよな』
天照『え、何? 経験者って?』
天照はいいよ。別にこれからお嫁に行く心配なんてしなくていいんだから。でも、俺は違うんだかから。
俺『天照はもう子どもがいるからな。3人も。もう別にちょっとくらい恥ずかしいことをされても動じないよな』
天照があまりもあっけらかんとそういうことを口にするものだから、ちょっとバカにされたような気がして言うつもりもなかった皮肉まで口に出してしまった。
天照『子ども? 3人? 何の話?』
俺『市杵島姫、田心姫、湍津姫』
天照『それがどうしたの?』
天照の態度は嘘をついて隠しているというより、本当に何を言っているのか分からないという様子だった。その態度に、俺はちょっとむかついた。
あんな可愛い3姉妹を育児放棄しただけじゃなく、認知まで拒否しているっていうのか? 生まれてから1度も会ってないからってそんなに冷淡になれるものなのか? 同じ女として、ちょっとひどい気がする。
俺『ちょっと、天照のこと、見損なったかも』
天照『え、ちょっと何言ってるの、姫ちゃん?』
俺『過去に何があったのか分かんないけど、お腹を痛めた赤ちゃんのことをそんなふうに言うなんておかしいと思う』
天照『お腹を痛めた赤ちゃんって何のことなの?』
これだけ言ってもまだ認めないなんて、イッチーたちがかわいそうだよ。信じられない!
俺『わかった。あくまで天照がそういう態度を取るなら俺にだって考えがある。もう、金輪際、天照とは口を聞かない』
天照『えー。なんで?』
俺『…………』
天照『ちょっと、黙ってちゃ分かんないよ。何で? 何があったの?』
あくまで白を切り通そうとする天照。それを無視する俺。こうなったら根比べだ。
俺『中宮のことはありがとう。でも、それとこれとは別だと思う。ちゃんと反省するまで怒ってるから』
そう言って、まだ何か言いたげな天照を残して御所から飛び立った。
ここでまた少しお休みを頂きます。1週間程度で復帰する予定です。次の話は多分短めのエピソードになると思います。




