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百玖拾弐.グロ?注意

 相変わらず弱々しい声で後ろから雨が声を掛けてきた。って言ったって、これ以上力を込めたら建物まで壊すし、中宮や女房たちまで巻き添えを食うぞ。


 ガキィンッ


 俺「とあぁっ」


 手詰まり感が漂う中、再び切りかかってきた鬼を気合を込めて押し返して、縁側の近くへと追いやる。


 よし、このまま外まで押し出してしまえば、全力が出せる。いけそうだっ。


 と思ったのもつかの間。鬼は薙刀を構えたまま、身体の周りにいくつも火球を作り出した。


 魔法かっ。てか、こんなところであんなものを使ったら、火事になるぞ。


 俺は慌てて水球を作り出して火球を相殺しようと準備するが、単なる防御ならともかく、周りに被害がでないように完全に相殺できるほど魔法の制御に自信がないし、たとえ完璧に相殺しても相殺の時の周りへの衝撃そのものは消せない。


 いっそのこと、多少の被害は無視して全力で本体を仕留める方が被害が少ないか?


 俺「え、あれ?」


 睨み合ったまま逡巡していると、急に鬼の火球が萎んでいった。それだけではなく鬼の胸のあたりから何か手のようなものが1本生えてきたかと思うと、全身が脱力したように崩れ落ちた。


 『くっくっく。やはりただの鬼では弱すぎる』


 鬼の後ろに突如現れた人影は、鬼から右手を抜くと、血にまみれたその手を一舐めしてそう言った。


 『もっと強きものでないと、我の渇きは癒されん』


 雨(お、お前は……!)


 やっと来たか。


 俺『天照。ちょっとリアルすぎてグロいぞ、そのエフェクト』

 天照『そお? やっぱり? 頑張って作った甲斐があったね』

 俺『あと、2本目の右手はさっさとしまったほうがいいぞ』

 天照『おうふ』


 つまりだ。今のは後ろから襲いかかった天照が、神業で鬼を気絶させて、手品の要領で作り物の手を鬼の胸から突き出したように見せかけて、血糊やら何やらでいかにもな雰囲気を演出しただけだ。決して、本気で天照の右手が鬼の胸を貫通したわけではない。


 俺『ところでこいつどうするんだ? 鬼だから退治するのか?』

 天照『いやーん。創世期ならともかく、今はそんな野蛮なことしないよ。もっとスマートにやるのだ』


 そういうと、天照は、鬼の側にしゃがみこんで何かを始めた。


 メキッ、ベリ、メキャッ、ギュル、ヌチャ


 何か不穏な音が聞こえてくるような気がするが、気にしないでおいたほうが人生は楽しいのではないかと強く思った。

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