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百玖拾壱.天の敵

 俺は驚いて名前を呼んで駆け寄った。これまで天照や月☆読と対決したり、雨や大国主におしおきをしたりしてきたが、その時にできる傷は現実感の薄いもので、どことなく作り物のような気がしていた。しかし、今度の雨の怪我はもっと現実感のあるものだったのだ。


 雨(ご主人さま、気をつけて)


 雨に言われてはっとして、俺は部屋の四方を見回した。異常はない。


 雨(今のは多分、鬼だ)

 俺「鬼?」

 雨(そう。芦原中国や根の国で僕たち神さまと対立してるんだ。根の国の醜女も鬼の一種だよ。とにかく、傷つけられた痕がこんな風になるのは鬼しかいないよ。神さま同士なら怪我はすぐに回復するはずだから)


 鬼か。鬼なら赤かったり青かったり、角が生えてたり金棒を持ってたりするのかな。


 雨(それにしても、根の国ならともかく、葦原中国で何の原因もなく鬼が出てくるなんて考えられないね)

 俺「……、陰陽師!?」


 そういえば、龍の3姉妹も陰陽師を警戒してたっけ。あれは陰陽師の使役する鬼を警戒してたのか。


 雨(多分、そうだね。うー。僕、戦いとか苦手なのに)


 さっきから雨は、言葉だけは軽薄だが、実際には出血がなかなか止まらず、顔色が徐々に悪くなってきていた。


 俺「じゃあ、中宮の不妊はもしかしてあれが原因なの?」


 こんなところに陰陽師の式神がいて、しかも一応は著名な神さまに問答無用で攻撃してくるということは、善からぬ意図があるに違いない。


 俺は取り出した太刀をすらりと抜き放った。


 雨(そうだと思う)


 その瞬間、視界の隅に再び何かが映った。俺はそれが何であるか確認するよりも早く、下から上へと切り上げた。


 ガキィンッ


 ぐっ。なんだこの感触は。


 金属がぶつかる音がして、俺の腕にこれまで感じたことがないような重みが加わった。天照のからりとした力とは違う、不快感を刺激する粘着質のオーラ。俺は、かろうじて押し返して距離を取り、初めてその鬼の姿を視界に収めた。


 僧兵装束に身を包み、薙刀を上段に構え、黒光りする肌を持った異形の大男。それがリアルな鬼の姿だった。残念ながら肌は赤くも青くもない。


 ガキィンッ


 速っ


 俺が鬼の姿を確認するために動きを止めた一瞬の隙をついて、再び薙刀を振りろしてきた。かろうじてそれを太刀で受け、右へと流す。


 くっそ。こっちは剣道の心得とかないんだぞ。


 太刀だけだと負けてしまいそうだと思った俺は、魔法で氷の矢を作って鬼に向かって打ち出した。しかし、矢は鬼の肌に触れた途端、あっさりと砕けて消えてしまった。


 雨(ご主人さま。鬼にそんな見掛け倒しは通じないよ。もっと力を込めないと)

まさかのシリアスバトル展開ですが、どうせ長くは続きません。

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