百捌拾参.やんごとなき招待状
結局、瀬戸内海で出会った龍たちは実は厳島神社の三女神で、話の流れ的に大納言にも関白にも会っていたらしいことがわかった。最も、関白は鈍感すぎて龍が現れたことにすら気づいていなかったらしいけど。
しかもこの三女神、天照とスサノオの娘らしい。なんてこった。今度、天照に会った時にじっくりその辺のどろどろを聞き出しておかないと。
温泉旅行が終わってしばらくして、旅行中の写真を現像してアルバムに整理しているところに、雪が慌てて飛び込んできた。
俺「え? 中宮さま?」
雪「そ、そ、そ、そうなんですっ」
なんでも、中宮さまから突然手紙が届いて、今度の私的な宴に招待されたらしい。
俺と雪が。
雨(中宮さまって巨乳派?)
俺「あなたは黙ってて」
中宮さまっていうのは例の中納言の妹で、確か雪よりちょっと年上なだけの、まだぴちぴち若い方だったはず。でも、帝と結婚したのは10代の前半だったそうなので、中宮としてのキャリアはそこそこある。噂によると美人らしい。実際にどのくらいの人が直で見たことがあるのかは疑問だけど。
そんな人が俺と雪を招待か。
まあ、養父の爺は今や四位でこの勢いだとそのうち公卿に上がるんじゃないかという勢いだし、俺自身が関白や中宮の兄の中納言からも求婚されてるし、一度見ておきたいという気持ちがあってもおかしくはないかも。それにしても、雪までとはね。
雪「あのっ、雨さまも一緒に来てくださいませんか?」
雨(えっ? 行く、行く。絶対行くよ!)
雪「よかった」
雨(僕が巨乳のお姉さまと知り合いになれる機会を逃すはずがないじゃん)
俺「ちょっと、何、勝手に決めてるのよ」
雪「あっ、すいません、かぐや姫さま。あの、1人じゃ心細かったので……」
むぅっ。なんかちょっと面白くない気がする。俺1人じゃ不安だって言うの?
雪「決して、かぐや姫さまが不安だというんじゃなくて、その、偉い方がたくさんいらっしゃると緊張するというか……」
雨(あれ? それって遠回しに僕はあんまり偉くないって言ってない?)
雪「…………」
雨(僕は神さまなのにぃっ)
俺「どさくさに紛れてわたしの胸に飛び込んで来ないでっ!」
バシッ
俺「まあ、いいわ。わたしと雪のお付きってことで、雨も連れて行きましょ」
雨(ほんと!?)
俺「ただし、変なことしたら、もう二度とおしおきしてあげないからね」
雨(大丈夫。我慢するよ。例え、中宮さまが巨乳でも)
俺「だから、そういうことを言うなって言ってんのよっ!」
大体、おしおきをしないのがおしおきになるってどういうことだよ、全く。