百漆拾伍.親しき仲にも……
天照(姫ちゃんっ。どう、これ?)
俺「すごく綺麗だわ。ありがとう、天照」
天照(へへー。褒められちゃった)
褒められて機嫌がよくなった天照は、嬉しそうに俺に抱きついてきて胸の当たりに頬を擦り寄せる。……、ここに巨乳好きの雨とかシスコンの月☆読とかがいたら大変な騒ぎになっているに違いない。
雪「かぐや姫さま」
墨「……」
気がつくとさっきまでライトアップされた紅葉を眺めていた雪と墨が俺の両側から挟み込むように近づいていて、さっと俺の隣に座って身体を寄せてきた。
俺「綺麗だね、雪」
雪「はい」
そうやって、俺たち4人はお互いの存在を身近に感じながら、紅葉狩りを楽しんだのだった。
雪『○なてぃっく みょ○にる く○っしゃあ?』
天照(そうそう。そんな感じ。後、手はこうやって……)
俺「やめて。雪に変なことを教えないで」
墨『邪王○眼……』
俺「墨も眼帯をしたまま歩いたら危ないよっ」
ちょっと身近に感じすぎだと思った。ちょっとだけ。
その後、天照の発案でなぜか俺たちは4人でこっくりさんをすることになって、うっかり引き寄せられてしまった低級霊を天照が鷲掴みにして捕獲して、ポルターガイスト現象を起こさせたりして遊んだ後、夜中すぎに帰っていった。
すっかり疲れた俺たちは、その後は3人とも泥のように眠ってしまった。
…………
………
俺「…………」
ふと目を開けると辺りが明るい。いつの間にか、もう日はだいぶ上がってしまったようだ。
雪『おはようございます。かぐや姫さま』
俺『おはよう、雪』
雪は最近、朝の挨拶は現代語でするようにしている。現代に戻ることができないと分かった後も、雪は現代語の勉強をやめるつもりはないらしい。
雪「もうすぐご飯ができますわ。もう少し待ってください」
俺「ありがとう」
雪の声は少し離れたところから聞こえてくる。カウンターキッチンに立って例の魔法のお鍋で朝ごはんを作っているのだろうか。俺は俺の脇でまだ寝ている墨をちょっとずらして、雪の声のした方に顔を向けた。
俺「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ」
雪「どうなさいました?」
俺「そっ、その服は?」
雪「あ、これは昨日天照さまから頂いたんです。かぐや姫さまがいらっしゃった時代の女房装束だと聞きました」