百漆拾肆.ライトアップ
そういうと天照はあちこちウロウロして、納得する場所が見つかったのか、ロッジから少し離れたところに立って手を伸ばして構えた。
天照(せーの。よいしょー)
天照が掛け声をかけながら手を引っ張ると。突然地面が半端ではなく揺れはじめた。
墨「にゃにゃ、にゃ、にゃにゃにゃっ」
俺「わわっ、何、これ」
雪「きゃっ」
両側から雪と墨が抱きついてくる。地震みたいだけど、天照が引き起こしてるんだよな。くっ、一体何が起きるんだ……。
天照(ふー。マグマ溜まりと地下水脈をちょっとこっちの方へ引っ張ってみたから、この辺を掘ったら温泉が出るよ)
俺「無茶苦茶だよっ」
天照(邪王○眼にできないことはないのだ)
俺「いや、今のは天照大御神の力だったよね?」
∨サインで喜んでいる天照は置いておいて、とりあえず掘ってみよう。どれどれ……
俺「あっ。本当。もう出てきたわ」
表面の土を本の1メートルほど掘り進んで見たら、すぐにお湯が湧き出してきた。
天照(姫ちゃーん。岩風呂を作るための岩を持ってきたよ)
俺「あっ、ありが……」
呼ばれてふと顔を上げた俺の視界に入ってきたのは、高さ3メートルもあろうかという巨大な岩を両手で持ち上げて駆けてくる天照の姿だった。
天照(くっ。不可視○○線管理局の影響が思った以上に強かった。今のはさすがのあたしも危なかったわ)
俺「もう、おなかいっぱいだよ!」
天照はいつまでこのネタを引っ張るつもりなんだ。
とにかく、ようやく露天風呂が完成して、俺たちはエターナルなんとかキャンプファイヤーに照らされながらお風呂に浸かった。
俺「はぁ〜〜。でも、せっかく紅葉の綺麗なところを選んだのに夜じゃよく見えないわね」
天照(じゃー、ライトアップしちゃおう)
そう言って天照が手を振ると、山全体がぼんやりした明かりに包まれて、下からの光に紅葉が美しく照らし出された。
天照(ついでに、あっちもこっちもっ)
さらに天照が手を振ると近くの島も光を放ち始め、瀬戸内海に幻想的な光の島々が浮かび上がった。
雪「綺麗……」
墨「にゃ……」
あまりの美しさにしばし絶句する雪と墨。現代から来た俺でさえ美しいと思うのだから、電気のない時代で生まれ育った2人には想像もつかなかった光景なんだろう。