百陸拾.おかえりなさいませ
俺『これより最終着陸態勢に入る。総員、対ショック体勢を取れ』
墨「えっ、えっ!?」
俺『しゃべるな。舌を噛むぞ。いざ、突撃ー!!!』
墨「ええぇぇぇっ」
ようやく帰ってきた平安京。人目を避けて夜が更けてから近づいた俺は、自宅をロックオンすると弾道ミサイルのように突撃を開始した。
目指すは部屋からのっそりと顔を出した式神。俺は片手に墨、片手に白い木箱を持って突き進む。一瞬で音速を超えた俺の身体は衝撃波を生み出すが、俺の耳にその音は届かない。
俺『もらったぁぁぁぁぁっ』
バコン
キキィーーーーッ
バキメキッ
ズズーン
手に持った白い木箱は狙い違わず式神を直撃し、式神は瞬間的に紙片へと変わる。続いて俺は全力で急ブレーキをかけたが、間一髪間に合わず、床を突き抜けて地面に着陸した。小さくない地響きを伴いながら。
俺『いてて』
墨「あわあわあわ」
ドタドタドタ
雪「しっ、式神さま!?」
物音に飛び起きたと思われる雪が、乱れた髪のまま、薄い袿1枚で慌ててやってきた。
俺「雪、ただいまっ」
雪「……、かぐや姫さまっ。お体はもういいんですか?」
俺「大丈夫よ。もう元気だわ。ありがとう」
部屋の床に開けた大穴から抜けだした俺は雪に返事をする。自動修復するといってもさすがにこの大穴が塞がるには少し時間が掛かるから今夜は別の部屋で寝ないとな。
雪「それでは、これからはまたこちらでお暮らしになるんですか?」
俺「うん。また、よろしくね」
雪「はい。あ、あのっ」『お、おかえりなさいませ、ご主人さま』
ズキューン
雪「式神さまに教えて頂いた現代語なのですが、いかがでしたか?」
俺「も、もう一回言ってみて」
雪『おかえりなさいませ、ご主人さま』
俺「……、も、もう一回」
雪『おかえりなさいませ、ご主人さま』
俺「…………」
雪「な、なにか間違っていますか?」
俺「か、完璧だよっ」
第4章、始まりました。投稿に先立ってあらすじを書いてから少し書き溜めを作っていたのですが、このペースだと第4章は50話程度には収まらない気がしてきました。とにかく頑張って書きますので今後ともよろしくお願いします。