百伍拾弐.MACHO
そして、俺は今、スサノオの屋敷の前に立っている。
もっとこう、冥界の王ハーデス!デデ~ン!!みたいなすごい建物(イメージ)があるのかと思っていたら、ちょっと大きめの山荘という位だった。意外だ。
墨と天児屋は俺の後ろに隠れてガタガタと震えている。お互い完全に俺の後ろに入って隠れたいらしいのだが、1人の背中を2人で分けたら、体半分は隠し切れないわけで、それでもお互い抱きあうようにして身体を小さくしてなるべく隠そうとしているようだ。
俺(ビビりすぎだろ)
天児屋(くぁwせdrftgyふじこlp)
(だめだ、こいつは)
コンコン
俺「おじゃましまーす」
……、返事がない。
ドンドン
俺「いらっしゃいませんかー」
…………、留守かな?
俺は山荘の周りをぐるっと探索してみたがそれらしい人影は見当たらない。
俺(本当にここなのか?)
天児屋(し、知らないよ、そんなこと)
俺(困ったな)
途方に暮れた俺は、山荘の正面から道らしいものが伸びているのに気づいて、それをたどって歩き始めた。もしスサノオが外出中ならこの道を通って返ってくるかもしれないと思ったのだ。もっとも、スサノオも空を飛べたら歩いて帰ってくるとは限らないので意味ないのだが。
とぼとぼと5分ほど歩いていると、道の向こうから何かが近づいてくるのが見えた。
(なんか速くないか)
彼方の方に現れたと思った何かはもうだいぶ近くに見えるようになってきた。すごい速度で地上を走っているのだ。しかもよく見ると、木や岩のほうが逆に道を譲っている。
(マ、マッチョだ)
天児屋(ぎゃー。出たー)
走っているのが超強面のマッチョだというのに気づいた時、天児屋が突然叫び声を上げて地面に倒れ伏した。その声にビビった墨も地面にうずくまって耳を抑えている。
その姿は身長2メートルを超え、服はシンプルな貫頭衣であるものの、ムキムキの筋肉といかつすぎる顔つきで、むしろ余計に強そうな印象を与えている。そして、あっという間に俺の前100メートルくらいのところに来たところで、その右腕を振り上げた。
(え、俺、殴られるの? なんでーーー)
衝撃派が発生しそうな勢いで振られたその大男の拳は、まっすぐ俺の顔面に向かって振り抜かれた。
(ひぇぇぇぇーーーーっ)