百肆拾参.メディア・リテラシー
天照『あたしがね、暗い夜道を不安そうに歩いているとね、突然姫ちゃんにぶつかって、押し倒されちゃったの』
すせり『バ、バイオレンス! ドキドキ』
俺『押し倒されたんじゃなくて、倒れただけだろっ』
天照『そしたらいきなり手を掴まれて、嫌だって言ったのに無理矢理引きずられて』
すせり『きゃー。で、で?』
俺『途中! 端折りすぎだ!!』
天照『すせり姫もまとめてやらせろって無理矢理ここに連れてこられたの』
すせり『わ、わたし!?』
バチコーン
天照『はうーっ!!?』
俺は無言で例のムチを取り出すと、天照の頭を思いっきりはたいてやった。
天照『ひどいよ、姫ちゃーん』
頭から血を流して詰め寄ってくる天照。
俺『うるさい。適当な作り話をぺらぺらしゃべってんじゃねぇ』
天照『なんでよー。嘘はついてないじゃん』
俺『真実を部分的につなぎあわせた結果が嘘ってのはよくあることなんだよ』
天照『あれだね。マスコミがよく使う手だね』
俺『さらっと深そうなこと言うなっ』
俺と天照が夫婦漫才を繰り広げているところ、さっきからみゆきちゃんが、みゆきちゃんが、と涙にくれてフリーズしていた大国主がようやく再起動した。
大国主『なっ、なんでお前がっ。けっ、結界があったのに』
天照『ごっめーん。あたしが入れちゃった』
大国主『なんでですか、天照さま!』
天照『だって、入れたら二本書紀の好きなところ50ページ音読してくれるって言うんだもん』
すせり『mjsk!?』
すっ、すせり姫。つば。つば飛んでるから。
大国主『だっ、そっ、あっ、ばっ』
天照『まあ、落ち着け。どーどー』
大国主『ぼっ、僕のみゆきちゃんが死んじゃったんだよ?』
天照『いいじゃん、また買えば』
大国主『限定品なんだよっ。もう2度と手に入らないんだよっ!』
天照『あちゃー』
俺『あのー』
興奮する大国主の様子にびくびくしながら恐る恐る手を上げる俺。
大国主『何っ!!』
親の敵でも見るかのような目で俺を睨みつける大国主にすこし怯むが、勇気を振り絞って心に浮かんだ疑問を聞いてみた。
俺『そもそも、あの抱き枕はどこで手に入れたのさ?』