百廿陸.リスニング
すせり(わからなくてもいいのよ、お子様には)
天児屋(何いってんだ、貧乳のくせに。お前だってお子様じゃないかっ)
天児屋の言葉を聞いて、すせり姫をもう一度見た。確かに神さまだけあって肌の張りとつやが素晴らしい上に、胸もないし背も低いから正直なところ10代の少女にしか見えない。まあ、天児屋は見た目小学生なのだけど。
俺『実年齢はどっちも数百歳のくせに』
すせり(何か言いまして?)
俺(いえ、何も)
びびった。現代語のつぶやきが理解できたのかと思った。
すせり(実際、数百歳だから仕方ないですけど)
俺(聞こえてたの!?)
すせり(あんな大きな声で話せば聞こえますわ)
俺(いや、現代語、というか1000年後の言葉が理解できるんですか?)
すせり(DVDを見て覚えました)
俺(は、DVDすか)
そういえば、お○んを見たと言っていた。なら現代語くらい聞き取れて当たり前だった。
俺(ところで、そのDVDはどこで手に入れるんですか?)
すせり(主人が時々くれるんです。見たいものがあったらリクエストしておくと、次の時に取り寄せてくれます)
俺(主人って大国主?)
すせり(はい。ポッ)
俺(いや、その「ポッ」って意味分かんない)
しかし、ここで大国主。やっぱり、大国主と時間転移魔法には何か関係があると見て間違いなさそうだな。
そして夕方。すせり姫はあの後も30分ほどボケ続けて家事が残ってると言って走って行ってしまった。偉い神さまの奥さんなんだから人雇えばいいのに。
それはともかく、大国主。もう仕事上がりのはずだから、そろそろこの廊下を通るはず。
……
………
(来ない。おかしいな)
天児屋(あっ!)
天児屋が声を上げて指さした方を見ると、大国主が反対側の方から回り込んでアニメ鑑賞室へと入ろうとしているところだった。
大国主(ひぃっ!!)
天児屋(お前、何こそこそしてるんだよ)
大国主は返事もせずに部屋へと飛び込んだ。
バシンッ
障子を勢い良く閉めた音を聞いた俺たちは、不思議に思いながら大国主の部屋へと駆け寄った。