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百拾漆.サラダボウル

 それから何日か、武甕槌と話す機会を探してみたけれどなかなか見つからなかった。


 その間に分かったことは、天児屋は春日神社の主神の1人のくせになぜか全然周りの神さまに相手にされていないということだった。一度、天児屋を先に立てて武甕槌に会いに行った時には、姿を見るなりお付きのものたちが天児屋を取り囲んであっという間につまみ出してしまったくらいだ。


 天児屋(武甕槌は本当はいいやつなんだよ。昔は一緒になってあちこち行ったんだ。あの頃は楽しかったな)

 俺(一体どんなバカなことをやったら、あそこまで無視されるんだ?)


 確かに天児屋はうざいバカだが、無視のされかたに気合が入っていたのでちょっと気になる。


 天児屋(天照が倒れて武甕槌がこの神社に赴任してきて、これからもっと一緒になって遊べると思ってたんだよ。でも、最初のうちはよかったんだけど、だんだん冷たくなっていって、そうこうしてるうちに僕と武甕槌以外の神さまも増えてきて、そいつらは初めから僕のことを嫌ってるんだ)

 俺(友達だと思ってたのはお前だけで、向こうは初めからうざい奴とか思ってたんじゃない?)

 天児屋(うっ、うるさいっ)


 痛いところを突いてしまったらしく、天児屋は涙目になって俺を睨んでくる。うーん。さすがに可哀想かも。


 墨「よしよし」


 何を思ったか、墨が近づいてきて天児屋の頭をなでる。墨も天児屋が可哀想に思ったのか。猫のくせにいいやつだな。


 天児屋(やめろ。子どもの洗濯板なんかに興味はないんだっ)

 俺(一瞬でもお前のことを可哀想だと思った俺が間違ってたよ)


 さて、天児屋が本格的に役に立たないことが証明されてしまったので、俺は単身で武甕槌と話す機会を探すことにした。一応、主神の天児屋が許しているので俺が自由に歩き回ることは黙認されているし、客人ということなので天児屋のように問答無用でつまみ出されるということもない。ただし、武甕槌にこちらから近づくのは容易ではなかった。


 (うーん。もう諦めようかな)


 天児屋から時間転移魔法の手がかりが出雲の大国主にあるという情報をもらっているので、武甕槌が難しいようなら先に出雲に行くほうがいいかもしれない。そんな考えに傾きはじめた時、武甕槌に声をかけられた。


 武甕槌(確か、かぐや姫だったか?)

 俺(あ、はい)

 武甕槌(約束を違えたことは謝らねばなるまい。申し訳なかった。今、少し時間ができたのだが、話は今でもいいか?)

 俺(是非)


 そう言うと武甕槌は近くの部屋に入って腰を下ろした。後を追って俺も部屋に入って座った。


 武甕槌(で、なんだ?)

 俺(あ、あの、時間転移魔法について教えて頂けないかと)


 (なんか、改めて見ると、ものすごい威圧感のある神さまだな)


 武甕槌(天児屋から何か聞いたのか?)

 俺(いえ、あいつは関係ありません)


 ここは涙目で訴えていた天児屋を一応庇っておこう。


 武甕槌(そうか。まあ、いい。そこは追求しないでおこう。何れにしても、時間転移魔法について私から話すことはない)

 俺(あの、なんでもいいんです。天照が倒れた前後の話とか何か知っていませんか?)

 武甕槌(しつこい。その件について話すつもりはない。そんなに聞きたければ天照本人に聞けばいいではないか)

 俺(天照はすぐに話をそらすから聞けないんです)

 武甕槌(彼女が何を考えているか、私には分からん。そもそも、最近は連絡もとっていないからな。話はそれだけか?)

 俺(じゃあ、後1つ。天児屋はどうしてあんなに無視されているんですか?)

 武甕槌(話はこれで終わりだな)


 そう言うと、武甕槌は俺の方を振り返りもせずに立ち去った。

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