表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/362

百拾陸.銀の鈴

 (やー、まさか神さまと使い魔契約できるとはね)


 昨晩の天児屋との「いいこと」の後、思いがけず天児屋を使い魔にすることができた俺は、最初のお仕事として朝ごはんを2人分取りに行かせたところだった。使い魔契約には相手が完全に屈服する必要があるが、昨日の「いいこと」は天児屋の心から反抗心を一切消してしまったようだ。


 天児屋(ごっ、ご主人さま。朝ごはんを持って来ました)

 俺(おっ。ありがとー)


 天児屋は涙目になりながら、お膳を持ってきた。なんか、この反応、初々しいな。三羽烏や墨が使い魔になった頃もこんな感じだったなぁ。


 墨「ひっ」


 にこにこしながら墨に同意を求めるように振り返ったら、怯えられた。


 俺(あ、今日はお昼前に武甕槌さんと会う約束になってるんだけど)

 天児屋(か、勝手に会えばいいじゃないか)

 俺(へぇ……)

 天児屋(す、すいません。な、何をすればいいんですか?)

 俺(大したことじゃないよ。ただ、案内してほしいなって)


 正直、この屋敷の構造はまだよくわからないんだよな。


 基本的に朝日とともに起き、夕日と共に寝るという生活の中で、朝ごはんからお昼までの時間は結構長い。といって、ただ待っているのも時間の無駄なので天児屋を捕まえてもう少し時間転移魔法について尋問してみたが、大した収穫はなかった。


 天児屋(ご、ご、ご、ごめんなざいぃ。も、もう生意気なごとはいいまぜんがらぁぁぁ)


 後、まだ使い魔としての自覚が足りないようだったから、少しだけお説教しておいた。


 天児屋に案内されて、渡り廊下を渡りながら屋敷の中をあちこち歩いていると、大きな池に面した建物へと出た。俺はその屋敷で一番池がよく見える部屋へと通されて、武甕槌の到着を待つことになった。


 …

 ……

 ………


 (…………、遅い)


 明らかに太陽はピークを超えて下がり始めているのに、武甕槌はいつまで経っても現れない。


 俺(おい、天児屋)

 天児屋(はっ、はいぃっ)


 しびれを切らして天児屋にテレパシーで話しかけると、震える声で返事が帰ってきた。うーん。初々しいね。


 俺(武甕槌が来ない)

 天児屋(た、武甕槌は昼頃どこかへ出かけたみたいですが)

 俺(はあ?)

 天児屋(まだ、あ、会ってないんですか?)

 俺(会ってない)

 天児屋(あー、じゃあ、きっと忘れられたかも)

 俺(忘れた……?)

 天児屋(あいつの予定は秘書の経津主ふつぬしが管理してるけど、経津主に話を通してなかったから間違って別の予定を入れられたんじゃないかな)

 俺(ええーー。だったら、その経津主と交渉して……)

 天児屋(でも、正面から予約しようとすると、コネのない人の面会は1年待ちになっちゃいますよ?)

 俺(お前はコネにならないのかよ)

 天児屋(ふっ……)


 テレパシーを通しての会話で顔を見ることはできないが、天児屋の最後の短いため息には深い哀愁が漂っていた。お前…………。

ご愛読ありがとうございます。気付いたら前話投稿の時点で累計UUが6万を超えていました。これからもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この小説は、一定の条件の下、改変、再配布自由です。詳しくはこちらをお読みください。

作者のサイトをチェック
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ