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百拾伍.い・い・こ・と

すいません。今回は調子に乗りました……

 その後、俺と雪はお互い状況報告を行なって、相手の体調を気遣って、明日また同じくらいの時間に連絡を取ることを確認して、通話を終えた。


 (さて)


 後1時間もしたら天児屋が「いいこと」をしにこっちに来るはずだ。一体どんな「いいこと」をしてやろうかな。


 墨「か、かぐや姫さまっ!?」


 この後のことを考えて俺がにやにやとしていたら、目があった瞬間に寝転がっていた墨がひどい顔をして飛び起きて部屋の隅へと逃げ込んだ。失礼な。


 天照からもらった『できる平安魔法 R18版』はこういうときに便利そうな魔法がたくさん詰まっていた。とても自分に試してみようとは思えないものでも、天児屋相手なら心置きなく使えるというものだ。


 俺「うっふっふっふっふ」

 墨「ひぃっ」


 まずは、何かの機会に使うこともあるかと思って作っておいたものを木箱から取り出した。


 一見はただの短いムチのような外見だが、これは痛みだけ与えて怪我をさせることはないという不思議なムチだ。叩いた瞬間こそ赤く腫れるのだが、その腫れも1分も経たないうちに消えてしまう。何に使うものかって? ふふふ、良い子は知る必要なんてないことに使うんだよ。


 後はそうだな、途中で逃げられないように緊縛系の魔法もあったほうがいいかもな。


 俺は庭に降り立って適当に草の実を集めて、例によってめんどくさい手順を踏んで不思議な種を作り出した。これは俺の意志に反応して自由につるを伸ばして相手を縛り上げる草の種だ。縛り上げることにしか使えず、締め付けも弱いので怪我をしたり跡がついたりすることはないが、俺が解くまで逃れることはできない。


 ろうそくとかもあると雰囲気が出るんじゃないか?


 あいにくろうそくの持ち合わせはないが、面白い幻覚魔法がある。汗をかいて床にしずくが落ちると、そのしずくが蝋となり積もってろうそくとなるのだ。しかもそのろうそくは燃えれば燃えるほど太くなっていく。幻覚だからやけどはしないが、まるで本物のように熱く感じるし、ある程度大きくなれば手にとって蝋を垂らすこともできる。


 後は衣装か。基本は狩衣を脱いで小袖姿になっておけばいいと思うんだけど、もうちょっとインパクトが欲しいかな。八咫烏の羽は必須として……。


 そんなことを考えながら頭の中のデータベースを検索していたら良い眼鏡を見つけた。よくある変装用の眼鏡に見えるのだが、それを通して見つめられると目をそらすことも閉じることもできなくなるのだ。効果的に使えば使いでがありそうだ。早速、天照に貰った神紙を木箱から取り出して工作に取り掛かった。


 (そろそろ時間かな?)


 後は大声を出してご近所さまに迷惑がかからないようにと誤って舌を噛んだりしないように猿ぐつわを用意してと。よし、準備OK。


 俺は狩衣と袴を脱いで雰囲気を出すために小袖の胸元を少しはだけさせて肩を出し、畳に横になって、露出した肩が見えるように注意して狩衣を掛け布団のように掛け、寝たふりをして天児屋を待った。ちなみに、墨は部屋の隅の方で頭を腕で抱えるようにして顔を伏せてうつ伏せになっている。


 天児屋(か、かぐや姫ちゃん? あ、天児屋だけど……?)


 抜き足差し足でやってきた天児屋が俺の部屋を静かに覗きこむと、ひそひそと念話で話しかけてきた。


 俺(待ってた。早く入って)

 天児屋(おっ、おうっ)


 天児屋がいそいそと俺の部屋へと入り込んでくる。


 俺(恥ずかしいから、障子、閉めておいてね)

 天児屋(わ、わかった)


 完全に言うなりになった天児屋が障子を閉め、待ちきれないように俺の方へと2歩3歩と歩き出した時、それは起こった。


 予め床に転がしてあった種が発芽して、天児屋の足を絡めとったのだ。そしてそれは勢い良く成長して瞬く間に天児屋の四肢の自由を奪ってしまう。


 天児屋(なっ、何、これっ!?)

 俺(ふっふっふ。かかったな、エロガキめ)


 その夜の春日神社には、どこからともなく聞こえる恐怖に引きつった猫の鳴き声が途切れることなく響きわたっていたという……

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