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茶.流行の最先端

 目の前でこめかみを押さえて涙目になっているチビを見て、俺は頭の痛い思いをしていた。最高神がアレだからコレは想定内といえるのかもしれないが、それにしても日本は一体どうなっているんだ……


 天児屋(よし。お前、巨乳だから特別に僕の家に案内してやる。お付きの猫もしょうがないからついて来い)

 俺(やたらと偉そうだな)

 天児屋(実際偉いからな)


 ぐりぐりぐりぐり


 天児屋(痛い痛い痛い。当てるのはおっぱいだけにしてくれ)

 俺(やっぱり死ね)

 天児屋(ごっ、ごめんなさいっ。もう生意気な口は聞きませんから、許してぇ)


 天児屋が泣きを入れてきたので、俺はようやくこめかみのぐりぐりをやめてやった。


 天児屋(ふんっ。ま、まあ、僕は大人だから一歩引いてお子さまのお前らを立ててやらないこともない……、って、もうぐりぐりはやめてください。お願いします)


 上下関係がはっきりしたところで、俺達は天児屋を先に立てて春日神社へと入っていった。


 神社には人間の入り口と神さまの入り口の2つがあって、普通の人間に見えているのは人間の入り口だけだ。かくいう俺も天児屋に案内されるまでは人間の入り口しか見えていなかった。多分、上賀茂神社にも見たことはないけれど同じように神さまの入り口があるのだろう。


 神さまの入り口をくぐった俺をまず最初に出迎えたのは、さっきまでの不快指数MAXの熱気が嘘のように消えてしまった快適なそよ風だった。といっても、季節感を失うような風ではなく、不快感を取り除いて純粋な夏らしさだけを濾しとったような理想的な夏が広がっていた。


 (これが神さまの世界か……)


 これに比べると俺が魔法を駆使して居住環境を改善した屋敷も、現代の科学技術を詰め込んだ建物も、子供だましにしか見えないなと思った。


 天児屋(ほぉ、恐怖と感動で声も出ないようではないか)

 俺(いや、そこまでではない)


 天児屋がネタかどうか区別しにくいネタを挟み込んだような気がしたが、偶然だと思う。


 天児屋(こっちだ)


 俺達が連れられてきたのは広い庭園に散在する建物のうちの1つだった。その建物は平安時代によく見られる寝殿造りではなく、もう少し時代が下った頃に現れる書院造りの建物だった。


 俺(神さまの世界って時間の流れとか関係ないんだな)

 天児屋(そんなことはない)

 俺(でも、これは平安時代の建物じゃないだろ?)

 天児屋(葦原中国のファッションなんて古くてダサくて使えるわけないだろ。これが今の高天原の流行だ)

 俺(は?)

 天児屋(葦原中国のファッションは高天原のファッションより数百年は遅れてるからな)


 ……、高天原が神さまの住む天上界のことで、葦原中国が人間が住む地上界のことだから、天児屋が言うことはつまり、神さまのファッションは人間のファッションより数百年進んでいるってことだ。書院造りは鎌倉時代に始まり室町時代に発展したのだが、神さまの世界では平安時代に流行していたということか。


 俺(って言うことは、お茶があるのか? お茶!)

 天児屋(うるさいな、耳元で騒ぐなよ。茶の湯だろ、あるに決まってんじゃないか)

連番が「茶」になって、本文でも茶の話をしてますが、

┌─────┐

│偶 然 だ ぞ.│

└∩───∩┘

  ヽ(`・ω・´)ノ


前にも書きましたが、本格的にお茶が日本で飲まれるようになったのは、鎌倉時代以降です。それ以前にもお茶の文化は断続的に持ち込まれているようですが、定着することはありませんでした。


書院造りは鎌倉時代以降に用いられるようになった建築様式で、武士階級を中心に浸透して行きました。現代の和風建築の元になった建築様式です。

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