百参.薄い本
俺『あはははっ、やめっ、やめてぇっ、ははははははは』
天照『ふっふっふ。こんなもので済むわけがなかろう』
俺『だっ、ダメー。生はやめて。耐えられないっ。ひーーっ、あはははははは』
天照は俺の抵抗を巧みに抑えこんで床にうつ伏せに押し倒すと、袖の脇から手を差し込んであろうことか脇の下を生でくすぐり始めたのだ。しかもその手つきの上手いこと。俺は一瞬で極限のくすぐったさに耐えられなくなってしまった。
俺『やっ、やめっ、やめろって、ははははは、ちょっ、あはははは』
天照『うりうりうり』
(くそぉ、このままでは)
俺は心を無にして一瞬だけくすぐったさを我慢し腕に力を込めて脇を締めた。脇の間に入れていた天照の手が腕と胴の間に捉えられて動きが止まった。
俺『油断したなっ』
俺はそのまま跳ねるように身体を起こすと一瞬で天照と身体の位置を入れ替えた。
どんっ
天照は背中を床にして仰向けになって、俺は上にまたがると二度とくすぐられないように天照の両手を自分の両手で押さえ込んだ。
天照『そんな、姫ちゃん、大胆っ』
俺『へ?』
よく考えるとこの姿勢はやばい。俺が天照の上にのしかかって両手を組み伏せて、一体これから何をしようというんだ?
俺『いやっ、違うっ、これは、そんなんじゃなくてっ』
天照『もうっ、私は姫ちゃんが相手ならいつでもOKなのに』
俺『えっ、遠慮しておくっ』
俺は慌てて天照の上から飛び退いて後ずさった。
天照『知ってるよ。姫ちゃん、最近欲求不満だよね』
天照は怪しい笑みを浮かべてにじり寄る。俺は背筋に寒いものを感じて無意識に身体を引いていた。
俺『なっ、何を……』
天照『だからイケメンの貴族たちに囲まれた時についうっかり暴走しちゃったんだよね』
俺『そっ、それは……』
あまりにも図星で反論できなかった。ついさっきまで自己嫌悪になっていた自分を思い出してまた少し落ち込んでしまった。
天照『そんな姫ちゃんに素敵なプレゼントがあるんだよっ』
俺『プレゼント?』
天照『うふふっ。じゃーん』
そう言って天照が取り出したのは1冊の本だった。しかも、どこかで見たことのある装丁だ。嫌な予感しかしない……
天照『前のが好評だったから、また作っちゃったよ。しかも今度はサイン入りブロマイド付きだっ』
そう言って見せられた本には現代語でこう書いてあった。
『できる平安魔法 R18版 written by AM∀TERASU』
(やっぱりか。っていうか、R18ってどういうことだ)
いつもご愛読ありがとうございます。前話投稿時点で累計UUが5万を超えていました。今後ともよろしくお願いします。