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百弐.第2ボタンは誰から?

 (今、雪に会うのは気まずいな……)


 俺『ゆ、雪は今日まで3日間裳着の祝宴があって疲れてると思うから、後で俺の方から伝えとくよ』


 天照は一瞬不審な顔をしたが、すぐに元の顔に戻った。


 天照『そう。ま、いっか。それはついでの用事だったし』

 俺『ついでかいっ!!』


 いい加減なやつだと思いながら、俺はふとさっきまで自己嫌悪の塊になって指を動かすのも嫌で雪にまで当たるほど荒んでいた気持ちがいつの間にか穏やかになっていることに気付いた。天照のめちゃくちゃなペースに振り回されて自己嫌悪なんてすっかり忘れてしまったようだった。


 (天照、もしかして俺を励ますためにわざと…?)


 天照『あー、これ何ー』


 突然、天照が素っ頓狂な声を上げた。俺が考え事をしている間に部屋を物色して何かを見つけたようだ。


 俺『あっ、それは中納言の袖』

 天照『中納言の袖?』

 俺『ああ。昨日の昼、石上の中納言って人に貰ったんだよ』

 天照『あー、学ランの第2ボタンみたいな?』

 俺『そっ、そんなわけないだろっ』


 (ちょっ、ちょっと待てっ。なんで俺は顔が赤くなってるんだ。おかしいだろ、男同士だぞ)


 ドキドキしている俺の様子を見た天照は悪巧みの笑みを浮かべたと思ったら、突然泣き始めた。


 天照『ひ、ひどい、姫ちゃん。あたしというものがありながら、よりによって男なんかと、ピーーーなんてっ』

 俺『ピーーーとか口で言ってんじゃねぇ』


 すると、天照は中納言の袖を床に落とすやいなやいきなり間合いを詰めてきて、腰を捕まえると人差し指を胸に突き立てて甘える仕草で円を描くように回し始めた。


 天照『ねぇ、姫ちゃん。男なんかより女同士のほうが…』

 俺『どさくさにまぎれて変なとこを触るなーっ』


 (前言撤回。こいつはやっぱり自分の欲望のことしか考えてないやつだった)


 俺は手にあった衛府太刀を素早く抜き払うと、刃のついた方を下に天照の脳天から切りつけた。神さまだから死ぬことはないだろうけど、死んだら死んだで一回天国に行って頭を冷やしてくるといいんだ。


 ガツン


 天照『ぎゃふんっ』

 俺『いてっ』


 信じられないことに、天照の頭蓋骨にヒットしたはずの太刀は人体にあるまじき音を立てて跳ね返った。予想外の衝撃を受けた俺は危うく手首をひねって捻挫するところだったほどだ。


 天照『痛いよ、姫ちゃん。死ぬよっ』

 俺『いや、むしろ何でお前そんなに元気なんだよっ』

 天照『もう怒った。今日は絶対泣いても謝っても許してあげない。絶対休ませてあげないんだからっ』


 そう言って天照は目をギラギラさせながら、手をわきわきさせてじりじりと近づいてきた。やばい、逃げ場がない。


 (え、何? 何をされるの?)

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