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プロローグ

 怒り。

 心の底から湧き上がり、頭を沸騰させる怒りが──公縞 垓(きみしま がい)、この俺の呪いだ。


 物心ついた時から、感情のままに暴れ、抑えることができなかった。今にも爆発せんとする激情の火種が心に住み着き、些細なことで爆発した。


 保育園では思い通りにならないと泣き叫び、小学生では笑われただけで椅子を投げた。中学では番長気取りの態度に腹を立て、怒りに身を任せて殴り続け、病院送りにした。


 ひどい青春だった。

 周りの連中は俺を怒りっぽい人間ではなく、どう猛な動物のように扱い、誰一人寄りつかなくなった。

 両親の笑っている顔を見たことがない。原因はもちろん俺で、覚えているのは沈んだ食卓と、震える肩だけだった。


 後悔ががなかったわけじゃない。

 (なぜ俺はこんなにも、どうしようもなく感情的なんだ! どうして怒りが収まらないんだ!!)

 だが後悔で怒りを収めようにも、制御できない不甲斐なさが新たな怒りを生むだけだった。


 ──そして、決定的な日が訪れた。

 中三の秋の暮れ、その日は特に心がすさんでいた。そんな時だった、ジャージ姿のおっさん教師が俺の服装にケチをつけた。命令口調の注意だった。スラックスからシャツが出ていただけだった。


(わざとだしていたわけじゃない……なのにこいつは俺をだらしないと勝手に決めつけ、直せと命令する……ジャージ姿のこいつが? )


 理不尽が怒りに変わった。自分の中で何かが切れた。気づけば拳を振り下ろしていた。

女子の悲鳴、男子のざわめき。俺と廊下で伸びている教師を野次馬が囲み、そいつらをかき分けて若い体育教師が俺を羽交い絞めした。

「離せ! 離せ!! 」

 俺が抵抗したまま別室に連れていかれ、複数の教員と教頭が俺を何度も尋問した。

「なにがあった」「どうして殴った」

 収まらない激情をまま、感情に任せて答えたから俺は何を言ったかもう覚えていない。


 教員を殴ったことが決定打となり、俺はついに少年院に送致されることになった。

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