第45話 妹って可愛いなぁ
「凛ちゃん、大丈夫?」
密着したまま全然離れないから少し心配になる、泣いている様子でもないし。
「あ、ごめん。なんというか……なんて言えばいいんだろう」
そんな言葉に詰まるような事を考えてるのか。
「手を繋ぐのと同じで、抱き着くのが落ち着く……」
「あ、あぁーそういうこと」
今までは手を繋ぐことに安心感を覚えていたが、いよいよ手だけでは収まらなくなってしまったらしい。
この前、お父さんの件で心が傷んだ凛ちゃんを抱き締めて落ち着かせた影響か、今度はわたしとのハグにハマってしまったみたいだ。
まぁ女の子同士で抱き合うなんてよくあるスキンシップだしさ、わたしも凛ちゃん相手なら嫌な気分はしないよ。
恥ずかしさはもちろんあるし非常にドキドキしてるけど、こんな美少女に抱きつかれたら誰でも狼狽えちゃうよね。
というか凛ちゃんの方も落ち着くとか言ってるけど結構恥ずかしがってないか、体温高くなってきてるし。羞恥心と安心感は別物なのかな……。
いやわたしは構わないけど、こんな所誰かに見られたらなんて言い訳すれば「姉ちゃんっ! ただいまぁー! え?」
壊れそうな勢いでドアを開けて元気に登場したのは妹の鈴ちゃんだった。あんなこと考えてたら本当に見られちゃったよ。
壁際に配置されたベッドはドアと対格の位置にあるので、抱き合ってたのもバッチリ丸見えだ。
「えっ? 姉ちゃんたち何でくっついてるの?」
「いやぁ……なんでだろうね?」
いきなり入ってきたから凛ちゃんも動けなかったみたいで、まだわたしと密着していた。そろそろ離れた方がいいと思うんだけど。
「凛ちゃん〜? 1回離れようか」
ゆっくりと引き剥がした凛ちゃんの顔はめちゃくちゃ真っ赤だった。風邪を引いてるとかいうオチではなく、羞恥心によるものだろう。人ってこんなに赤い顔になれるんだ。
「あ、鈴……おかえり」
鈴ちゃんの顔も見ずに言っていた。友達に抱きついて甘えてる姿なんて妹に見られたくないよねぇ。
「ん〜? なるほど!」
何かに気付いた鈴ちゃんがわたしの方にぶっ飛んできた。
「おわっ」
そのまま全体重を乗っけられてベッドに倒れ込む。元気な子だなぁ。
「私もさゆ姉に抱き着く〜!」
咲百合さんだと堅苦しいし、咲百合お姉ちゃんは長い。直感でさゆ姉と呼ぶことにしたのだろう。
「さゆ姉あっついね」
「それはまぁ、ずっとくっついてたし……」
ほとんど君のお姉ちゃんから貰った温かさですよ。
「なんでずっとくっついてたの?」
「なんでかな?」
凛ちゃんは何も喋らない、ベッドの上で抱き着くとか小学生相手じゃなかったら完全に誤解されてたぞぉ。
「変なのー」
「だねぇ」
鈴ちゃんはわたしの胸に顔を埋めていた。子供は体温が高いっていうのは本当らしい、また熱くなってきた。
「さゆ姉めっちゃいい匂いする!!」
私に乗っかったまま顔だけ上げて目をキラキラさせていた。わたしそんなに匂いするかな……自分じゃ自分の匂いって分からないんだよねぇ。もしや結月家の遺伝子に好かれる匂いなのでは……?
凛ちゃんは何も言わず腕を組んで首を縦に振っていた。後方彼氏面かな。
「鈴ちゃん、せっかくだし一緒に遊ぼうか!」
「遊ぶ〜! おっさんカートやろう!」
ほぼ初対面でこの懐っこさ、さては年上に甘えるのが上手いタイプだな?不思議と頭を撫でたくなってしまう。実際に妹だから当然なのだけれど、これが妹属性ってやつか。
「おー、あの最新のソフトか! わたしゲーム機あんまり持ってないからやってみたかったんだよね」
「私あのゲーム得意! 姉ちゃんよりうまいんだよ」
「おぉーそうかそうか! あんまりわたしのことボコボコにしないでくれよー」
多分凛ちゃん手加減してあげてるんだろうなぁ。友達とのトランプ対決にイカサマしてまで勝つような性格だけど、妹には激甘……まぁ妹が相手なら当然か。
リビングへ移動すると凛ママも帰って来ていた、夕飯の準備をしているみたい。
「お邪魔してますっ」
「いらっしゃい、ゆっくりしてね」
柔らかい笑顔で歓迎してもらえた、美人すぎて見惚れちゃうなぁ……。
「あ、お母さんおかえり。私手伝うよ」
「いいよ、凛。せっかく咲百合ちゃん来てるんだから気にせず遊びなさい」
「ん、分かった。ありがとう」
過去の話を聞いた後だと、凛ちゃんが家事の手伝いを沢山しているのもなんだか感慨深い。
わたしも居候の分際だし、もっと家のこと手伝った方がいいかもしれない。凛ちゃんに料理とか教えてもらおうかな?




