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凛と咲き誇る百合の花  作者: イチノセ
第5章 凛より。
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第36話 噂の真相

「ただいま」

「お邪魔しまーす……」

 私の家に足を踏み入れた咲百合は、物珍しそうにキョロキョロしていた。やはり初めて入る人の家は落ち着かないのだろう。

「しばらくは誰も帰って来ないからリラックスしてくれていいよ」

 一度夕飯を作りに帰って来たので、鈴が外へ遊びに行っているのは把握済みだった。お母さんも今日は遅くなるらしい。

 本当は鈴に会わせたかったが、今日は遊ぶために呼んだ訳ではないので好都合だった。

「妹ちゃんもいないんだ」

「多分友達の家に行ってる」

「会ってみたかったなー」

 そう言って残念そうに笑っていた。

「また今度来てよ、妹も咲百合に会いたがってたし」

 咲百合が急にニタニタし始める。

「なにその顔」

「え〜? 妹ちゃんにわたしのお話してくれてるの〜?」

「い、妹が……聞いてくるから」

 照れくさくて少し誤魔化す。別に友達の話を家族とするくらい普通なのに、面と向かって言われると恥ずかしい。

「嬉しいなぁ〜」

「ほら、とりあえず手洗おう。洗面所そこだから」

 時々、こうしてからかわれる事が多くてどうもむず痒い。

だけど、決して嫌ではなかった。咲百合の楽しそうな顔は、見ていて癒される。


 手洗いを済ませて、2階にある私の部屋へと招く。

「ここが凛ちゃんの生活している部屋かぁ……」

 とりあえず壁際に設置されたソファへ先に腰を下ろす。こういう時、部屋の(あるじ)である私が先に座らないと咲百合も遠慮してしまうというものだ。

「じゃ、横座るね」

 私に部屋に、自分以外人がいるのは不思議な感覚だ。

 鈴といる時は大体リビングなので、このソファが2人並んで丁度いい大きさという事に今まで気が付かなかった。

 そっと、咲百合の手に触れる。

 割と普段から手を握っているので、咲百合も特に気にしていないようだった。


 この手に触れていると、一人じゃないと実感できる。勇気を貰える。

「咲百合は、私の悪い噂ってどれくらい聞いた?」

「どれくらいって……そりゃもう沢山」

「具体的に、どんな噂なのかなって」

 もちろん私の耳にも入ってはくるけど、知らない所でもっと散々言われている可能性は高い。

 きっと私への恨みとかではなく、単純に面白がって流している人が多いのだろう。

「具体的に……言っていいの?」

 そんな風に確認を取られると怖い。少し身構える。


「まず……」

 謎の緊張感に生唾を飲み込む。

「夕日の見える河川敷で、他校の生徒と殴り合いの喧嘩をしてたって聞いた」

「……は?」

 思ってたよりぶっ飛んだ話が出たなぁ。そんなシーン昭和のヤンキー漫画でしか見かけないと思う。

「他には、実は暴走族のボスとか」

「いや、免許すら持ってないんだけど」

「無免許?」

 すっとぼけて噂話に乗っかる咲百合を睨みつける。

「笑うと可愛いのに、そうやって睨むと凄みがなぁ」

「え、可愛い?」

 美人とか怖いはよく言われるけど、可愛いは滅多に言われない。

「後はね、おばあさんのカツアゲ話は前したし」

 あれは、嫌な思い出だ。

「他はほとんど髪の毛についてかな、くだらない作り話ばっかで特に語ることは無いよ」

 最初の2つはよく分からないけれど、大体予想通りの話だった。


「もう1つあった! わたし的にはこの話もかなりしょうもないと思ってるよ。色んな学校の生徒がいるのに、小学生時代の悪い話なんてするのかよって」

 小学生時代。そう聞いて私はもう察していた。

「小学生の頃、クラスの女子をボコボコにして骨折までさせたって! いくら何でも凶暴だよね」

 質の悪い作り話だと言ってニコニコと笑顔で語りかけてくる。

「……」

「凛ちゃん?」

「それは、本当」

「えぇ!?!?」

 当然の反応だった。

 私は昔、暴力で人を傷付けた。

「あ、でも少し語弊があって。ボコボコにしたのはその骨折した子だけで。いやそれも違くて、ボコボコって程でもないと思う」

「えぇ……うーん……あ」

 少し考えた咲百合が何かに気付く。

「納得した。どんなに突拍子もない噂話だって、その中にひとつでも事実があったら広まるか」

「まぁ、そういう事かもね」

「しかし喧嘩相手を骨折か……ちょっと怖いな」

「その件についてもちゃんと話すから。怖がらないで」

 握っていた手に力が入る。

「今からする話、少し重たいと思う。それでもいいかな?」

「うん、教えて」

 意外と即答だった。でも、その目は真剣に私を直視していて。興味本位で聞こうとしている訳では無いと語っていた。

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