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凛と咲き誇る百合の花  作者: イチノセ
第4章 激闘のポーカー編
34/50

第34話 中学時代の話

 咲百合の膝、というか太ももの上に頭を乗せる。

 人間の顔は下から見るとあまり綺麗には見えないらしい。だから、自撮りなどする時は可愛く盛れる斜め上から撮るのが基本。咲百合に教わった言葉を思い出す。

 なんだ、下から見ても可愛い人は可愛いじゃないか。

 私の方が身長が高く、普段は見下ろす形だったので下から見る咲百合の顔は新鮮だった。

 もう少し見ていたかったけれど、仰向けだとポニテが邪魔だったので体を横に倒す。視界には咲百合の胴体しか映っていない。

「同性だし、膝枕くらい普通にするよね」

 私を乗せた咲百合がぶつぶつ喋っている。


 会話が無くなると、本当に静かな部屋だった。時々聞こえてくるカラスの声や、物音。

 だけど聴覚よりも、嗅覚の方が気になり、思い切って咲百合の胴体へと頭を近付ける。

「凛ちゃん……?」

「咲百合、いい匂いする」

「か、嗅がないでよ……」

 香水は使ってないのかな、人工的な物を感じない自然な甘さ。柔軟剤だけでこんなにいい匂いが出るのかな。

「ちょっと、嗅ぎすぎだって。深呼吸しないで」

 癖になる匂いで離れられない。

 太ももとお腹に頭が密着しているので、咲百合の体温が上がっているのを直に感じる。

「温かいし、いい匂いで落ち着く」

「凛ちゃん……これってやっぱりえっちじゃないかな……」

 お腹に顔をくっつけたまま返事をする。

「健全だと思う。温かさも、匂いも、全てが咲百合の生きてる証だから」

「そんなスケールの大きい話かな……」

 私にとってはとても重要なことだった。


 落ち着くけれど、肝心の太ももは何とも言えなかった。

 明らかな運動不足、贅肉が付いていないとかそういうのではなく、単純に筋肉も少ないみたいだ。

 確かに咲百合の細い手足は華奢な体と合っていて、その魅力を更に引き立てているようにも見える。しかし、こうやって頭を乗せてみると不健康な足だと思った。

「咲百合、答えたくなかったら何も言わなくてもいいんだけど」

「うん?」

「体力が無いのも、手足の筋肉が少ないのも、やっぱり中学時代の影響?」

「……やっぱり凛ちゃんって、洞察力すごいね」

「太ももが、あんまり柔らかくない」

「クレームは受け付けてませーん」


 咲百合は、言い難いであろう昔話をしてくれた。

「体力は元々あまり無かったんだけどね、まぁ女子なら普通くらいだったと思う。だけど、1年半も引きこもってたから……あの頃は外にも出たくなかったし、気付いたら筋肉も全然無くなってた」

 多分、不健康なほどに薄い色の肌は、引きこもっていて本当に不健康だからだろう。咲百合に合っていて綺麗だと思うけど。

「外にも出ず、運動もせず、勉強して寝るだけ。普通なら太っててもおかしくなかったけど……ずっと食欲が無くて、無理して食べてもすぐ吐いちゃってた。お医者さんからは、極度のストレスが原因って言われた」

「だから、全体的に細いんだ」

「あ、今は全然食欲あるし、これでも当時より10kgぐらい増えてるんだからね。ちょっと痩せ気味だけど普通くらいだよ。筋肉や体力だって少しずつ戻ってるし」

 咲百合が、長距離でヘトヘトだったのも納得だ。


「そんな……そんな状態になるほど辛い事があったの?」

 勇気を振り絞って踏み込んでみる。

 少しの間を置いて。

「うん……ごめん。やっぱりまだ言えない」

 咲百合は、天井に向かってそう呟いた。

「凛ちゃんを信用してない訳じゃないよ。ただ、それを語るのを脳が拒否してる」

「そっか、全然気にしないでいいよ。咲百合の事を傷付けたくない。知られたくない事なら、ずっと知らないままでもいい」

 そう言うと、未だ太ももに乗ったままである私の頭を撫で始めた。

「優しいね、ありがとう。多分、実際に聞いたら大した事じゃないと思う。でもわたしにとっては……アレだから。いつか乗り越えられたら、笑い話にして教えてあげる」

 いつもより少し硬い笑顔を見せられて、それ以上は何も話さなかった。


 そんな空気を取っ払うように、咲百合が口を開いた。

「あーあ、わたしも凛ちゃんにお願い事したかったな、聞きたいこともあったし」

 どうせえっちな事でしょって言おうとしたけど、やめておく。

「イカサマに気付かれちゃったし、3回くらいなら聞いてあげてもいい」

「ほんと!? やった!」

「早速使うの?」

「ううん、まだ使わないよ」

「ちなみに聞きたいことっていうのは?」

「ずっと気になってたんだけど、もう当たり前すぎて聞けてなかったんだよね」

 次のセリフを聞く前に想像が着いた。きっと咲百合が聞きたいのは。

「凛ちゃんの金髪について、ちゃんと教えてほしいな」

 予想通りだった。

「やっぱり気になるよね……」

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