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凛と咲き誇る百合の花  作者: イチノセ
第4章 激闘のポーカー編
28/50

第28話 凛vs咲百合 ①

 まだカードの交換をしていない状態なのに、わたしの手元にはQ(クイーン)2枚、7が2枚のツーペアが完成していた。これは……幸先が良いぞ。

 使い道の無い4を机の端に置き、山札から1枚抜き取る。

 引いたカードは……6だった。これは仕方がない、ツーペアでもかなり良いので今回は強気に出られる。


「咲百合、大丈夫?」

 カードと睨めっこしていたわたしにいきなり声をかけてきた。

「え? 何が?」

「いや、随分と嬉しそうな顔をしてるなって思ってさ、もう勝負は始まってるのに」

 こ、こいつ……。自分の手札よりわたしの事を観察していやがった……!

「それに、そんなあからさまに1枚だけ交換してたら、何の役が揃ってるか予想できちゃうよね」

 ぐうの音も出ない。思ったよりも強敵かもしれない。

「そう思わせるブラフかもしれないじゃん!」

 苦し紛れの強がりを言ってみせる。

「咲百合、ポーカーは役の強さを競うゲームじゃないんだよ」

 そう言うと凛ちゃんは、持っていたカード全てを交換した。

「なっ……」


 その(いさぎよ)い姿を見せつけられ、思わず呆気にとられる。

 わたしの手札が、弱くてもツーペア……またはそれ以上が揃っていると、つい今言い当てた上でのオールチェンジ。

 それでわたしよりも強い役を揃えられる確率はかなり低いはずだ。

「そんな強がりでわたしが降りると思ってるの?」

 手札を確認した凛ちゃんの口角が少しだけ上がったように見えた。

「どっちが親番?」

 わたしの煽りには乗らず、冷静にゲームを進めるつもりだ。

「練習でわたしが親だったから、今度は凛ちゃんが親でいいよ」

 わたしも余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)といった感じで凛ちゃんへ親を譲る。

「じゃあ、これでもわたしが強がってるって言えるかな」

 そのセリフと共に、机の上には15個の白チョコが置かれた。


「ちょ、ちょっと待って。手持ちに20個しか無いんだよ? ここで15個取られたらほぼわたしの勝ちなんだけど分かってる?」

 初手から15個なんて、ルールを聞いていなかったのかと思うくらい無謀な賭け方だ。

 だけど、凛ちゃんの顔に迷いは全く無かった。

「私、負けないから大丈夫」

 いくら凛ちゃんがポーカーフェイスだからって、こんなに凛としていられるのか?

 冷静に考えてみれば、わたしが勝つ確率はかなり高い。

 でも、もしさっきのオールチェンジで本当に強い手札が揃っていたら……?

 ここでのレイズ(上乗せ)はまず無理だ。負ける可能性が少しでもある状態では、これ以上賭けられない。

 だからと言ってコールをして15個出しても、結局負けたらほぼ持って行かれる。15個というのが上手い。

 せめてわたしがツーペア以上なら、負けるかもという考えも払拭できたかもしれない。

 脳内で議論をしていても答えが出るはずもなく、こっちからも揺さぶる必要があった。


「単刀直入に聞くけど、凛ちゃんの手札教えてよ」

「へぇ……正直言うとブタ(役無し)だよ」

「は!?」

 これは……(ブラフ)だ。ブタを引いたのに、表情を変えず15個もベット出来る訳ない。

 いや、あのポーカーフェイスなら出来るかもしれない。

 揺さぶりをかけたのに余計追い詰められていた。


 やっぱりダメだ、どうやってもこの挑発には乗れない。ここでコールしたところで、凛ちゃんは更にレイズしてくるに決まっている。

 ここで15個失う可能性がある以上、とりあえず初手は降りて5個の損失で済ませるのが堅実。

フォールド(降参)で……」

 わたしが長考の末に出した答えを聞いても、凛ちゃんの表情は特に変わらない。

「降りちゃったか……じゃあ、ショウダウン(手札公開)だね」


 凛ちゃんが机に置いた5枚のカードは……やられた。

 スートも数字もバラバラの、完全なブタだった。

「咲百合の手札は?」

 悔しがる間も与えてもらえず、わたしに手札を開示するよう求めてきた。

「当ててみてよ、予想ついてるんでしょ」

 悔しさを晴らすためそんな事を言ってみる。

「うーん……さすがに数字までは分からないけど、ツーペアなのは確信してる。それ以上強い役なら、もっと強気に動いてくると思うから」

 全くもってその通りだった、完全なる敗北に返す言葉も出ない。

「わたしの家を特定した時も思ったけど、その洞察力なんなのさ……」

 手札を机に置いて、チョコを5個渡す。

 これで残りのチョコは15個。まだ巻き返せる。


「大丈夫、次も私が勝つよ。咲百合」

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