第28話 凛vs咲百合 ①
まだカードの交換をしていない状態なのに、わたしの手元にはQ2枚、7が2枚のツーペアが完成していた。これは……幸先が良いぞ。
使い道の無い4を机の端に置き、山札から1枚抜き取る。
引いたカードは……6だった。これは仕方がない、ツーペアでもかなり良いので今回は強気に出られる。
「咲百合、大丈夫?」
カードと睨めっこしていたわたしにいきなり声をかけてきた。
「え? 何が?」
「いや、随分と嬉しそうな顔をしてるなって思ってさ、もう勝負は始まってるのに」
こ、こいつ……。自分の手札よりわたしの事を観察していやがった……!
「それに、そんなあからさまに1枚だけ交換してたら、何の役が揃ってるか予想できちゃうよね」
ぐうの音も出ない。思ったよりも強敵かもしれない。
「そう思わせるブラフかもしれないじゃん!」
苦し紛れの強がりを言ってみせる。
「咲百合、ポーカーは役の強さを競うゲームじゃないんだよ」
そう言うと凛ちゃんは、持っていたカード全てを交換した。
「なっ……」
その潔い姿を見せつけられ、思わず呆気にとられる。
わたしの手札が、弱くてもツーペア……またはそれ以上が揃っていると、つい今言い当てた上でのオールチェンジ。
それでわたしよりも強い役を揃えられる確率はかなり低いはずだ。
「そんな強がりでわたしが降りると思ってるの?」
手札を確認した凛ちゃんの口角が少しだけ上がったように見えた。
「どっちが親番?」
わたしの煽りには乗らず、冷静にゲームを進めるつもりだ。
「練習でわたしが親だったから、今度は凛ちゃんが親でいいよ」
わたしも余裕綽々といった感じで凛ちゃんへ親を譲る。
「じゃあ、これでもわたしが強がってるって言えるかな」
そのセリフと共に、机の上には15個の白チョコが置かれた。
「ちょ、ちょっと待って。手持ちに20個しか無いんだよ? ここで15個取られたらほぼわたしの勝ちなんだけど分かってる?」
初手から15個なんて、ルールを聞いていなかったのかと思うくらい無謀な賭け方だ。
だけど、凛ちゃんの顔に迷いは全く無かった。
「私、負けないから大丈夫」
いくら凛ちゃんがポーカーフェイスだからって、こんなに凛としていられるのか?
冷静に考えてみれば、わたしが勝つ確率はかなり高い。
でも、もしさっきのオールチェンジで本当に強い手札が揃っていたら……?
ここでのレイズはまず無理だ。負ける可能性が少しでもある状態では、これ以上賭けられない。
だからと言ってコールをして15個出しても、結局負けたらほぼ持って行かれる。15個というのが上手い。
せめてわたしがツーペア以上なら、負けるかもという考えも払拭できたかもしれない。
脳内で議論をしていても答えが出るはずもなく、こっちからも揺さぶる必要があった。
「単刀直入に聞くけど、凛ちゃんの手札教えてよ」
「へぇ……正直言うとブタだよ」
「は!?」
これは……嘘だ。ブタを引いたのに、表情を変えず15個もベット出来る訳ない。
いや、あのポーカーフェイスなら出来るかもしれない。
揺さぶりをかけたのに余計追い詰められていた。
やっぱりダメだ、どうやってもこの挑発には乗れない。ここでコールしたところで、凛ちゃんは更にレイズしてくるに決まっている。
ここで15個失う可能性がある以上、とりあえず初手は降りて5個の損失で済ませるのが堅実。
「フォールドで……」
わたしが長考の末に出した答えを聞いても、凛ちゃんの表情は特に変わらない。
「降りちゃったか……じゃあ、ショウダウンだね」
凛ちゃんが机に置いた5枚のカードは……やられた。
スートも数字もバラバラの、完全なブタだった。
「咲百合の手札は?」
悔しがる間も与えてもらえず、わたしに手札を開示するよう求めてきた。
「当ててみてよ、予想ついてるんでしょ」
悔しさを晴らすためそんな事を言ってみる。
「うーん……さすがに数字までは分からないけど、ツーペアなのは確信してる。それ以上強い役なら、もっと強気に動いてくると思うから」
全くもってその通りだった、完全なる敗北に返す言葉も出ない。
「わたしの家を特定した時も思ったけど、その洞察力なんなのさ……」
手札を机に置いて、チョコを5個渡す。
これで残りのチョコは15個。まだ巻き返せる。
「大丈夫、次も私が勝つよ。咲百合」




