第27話 ルール説明
ただポーカーと言っても色々な種類がある。わたし達がこれからやるのは、日本で最も親しまれているファイブカードドロー形式のポーカーだ。
トランプを5枚ずつ配り、役の強さを競う。これだけ聞くとただの運ゲーだが、ポーカーの真髄はそこじゃなかった。
自分がどれだけ弱い手札を引いたとしても、表情や態度次第で相手に最強の手札だと思わせることもできる。
感情を表に出さず相手に心中を悟らせない、これがポーカーフェイスと呼ばれる所以だ。
「基本的なルールは普通のポーカーね。2が最弱で、Aが最強。ジョーカーは全ての数字と図柄に対応。カードの交換は何枚でもいいけど1回だけ」
後は説明するまでもないけど、役は弱い順に「ワンペア、ツーペア、スリーカード、ストレート、フラッシュ、フルハウス、フォーカード、ストレートフラッシュ、ロイヤルストレートフラッシュ」だ。
「次に、このチョコレートを使います」
簡単なルール説明をして、机に置いてあった袋からチョコレートを取り出す。
四角いサイズで、よくある黒いチョコと白いホワイトチョコが、個包装で20個ずつ入っている。
「それ、私が買ってきたやつだね」
そう、先に帰った凛ちゃんがスーパーに寄って買ってきてくれたやつ。
「えっと、開けてもいいですか」
「どうぞ」
許可を取って袋を開ける。
黒いチョコをわたしの方へ置き、白いチョコはテーブル向かいに座る凛ちゃんへと渡す。
「なるほど、チップの代わりって事か」
「さすが、察しがいいじゃん」
その通り、実際のお金を賭けてしまうと遊びじゃ済まなくなる。なので、ここではチョコレートを賭けて戦う。
「自分の持ってる20個のチョコが無くなったら負けね」
「分かった」
「チョコと貞操が懸かってるから本格的にやるよ」
「貞操なんて賭けた覚えないけど……」
何でもするって言っちゃったから、多分貞操も懸かってるんだよ。
「とりあえず流れを掴むために練習試合しようか」
まずは山札から5枚ずつカードを配る。
「最初に、賭けるチョコを場に出す。これをベットって呼ぶね」
今回はわたしのベットで進行するから、わたしが親番。後から動く凛ちゃんが子番だ。
「とりあえずチュートリアルだから、わたしは5個のチョコをベットします」
机の中央に置かれた山札の横に、チョコを5個置く。
「次に凛ちゃんは、この5個と同じ数を出すコールか、更にチョコを上乗せするレイズか、勝負から降りるフォールドを選べます。もし初手で降りたら、賭けチョコの数は関係無く5個没収で」
「なるほどね、じゃあここはレイズで」
「レイズの場合は、相手よりひとつ以上は多く出そう。今回の場合最低6個ね。とりあえず出してみて」
わたしの言葉通り、さっき出した黒チョコの横に、6個の白チョコが置かれた。
「子番がコールかレイズをしたら次は親番。またさっきの3択から選べるようになる。少し省くけど、最初のベットはノーカンとして、お互いが2回動いたらショウダウン」
わたしが5のワンペア、凛ちゃんはブタか。
「勝った方が、机の上にあるチョコを総取りね」
ガサーっと11個のチョコを引き寄せる。
「あ、もちろんチョコが無くなったら負けなんだから、賭けられるのは自分のチョコだけだよ。コールもレイズも出来なくなったら……こっちのグミで借金するか」
ルールの穴を埋めるため、急遽凛ちゃんの買ってきたグミの袋を取り出す。
「借金したらどうなるの?」
「じゃあ、グミの数だけ相手のお願いを聞く?」
「へぇ、面白そう」
「このチョコはチップというより残機みたいな役割りか……持ってかれたら増えることは無い、最終的に支払えない分はグミで借金する。分かった」
「理解が早くて助かるよ。また分からないところがあったら、その都度聞いてくれればいいし」
チョコとカードを元に戻し、山札を切る。
わたしが適当にシャッシャと切った後、凛ちゃんへ渡して更に切ってもらう。
これはもちろんイカサマ防止だ、本格的にやるんだからこれくらいしないと。
机の中央に置かれた山札へ手を伸ばし、順番で1枚ずつカードを取る。
「じゃあ、1回戦。始めようか」
冷静にそう言った凛ちゃんの顔はいつになく真剣で、思わずわたしも生唾を飲み込む。
いつしか読んだ、漫画の名場面を彷彿とさせる。亡くなった仲間の想いを背負って、諸悪の根源とギャンブルで勝負をする男の影が見えた。これはそんなに大層な物語じゃないけれど、今のわたし達はそれと同じくらいの熱さがあった。




