表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凛と咲き誇る百合の花  作者: イチノセ
第4章 激闘のポーカー編
25/50

第25話 かけがえのない時間

 鈴は、私に友達ができた事がすごく嬉しいみたいで、満面の笑みを浮かべながら楽しそうに肉をこねていた。

 聞いた話だと学校ではこんなにお転婆ではなく、元気な部分はあるけどしっかりしていて優等生らしい。想像はできないけど姉として誇りに思う。

 鈴の方も、私が学校であんな扱いを受けているのは知らない。心配かけたくないから知ってほしくもない。

 最初は、私のせいで鈴がいじめられたりしたらどうしようかと思っていた。だけど、年齢差のお陰なのか私の噂は流れていなかったみたいで普通の学校生活を過ごせているようだ。

 もし鈴が酷い目に合っていたら、私はどんな手を使ってでも守りに行ったと思う。どんな手を使っても。


「お肉焼くのはお母さん帰って来てからにしよう、今日午後の6時には帰ってくるってメッセージあったし」

 鈴が一生懸命こねてくれたタネをボウルの上からラップして、冷蔵庫へ入れておく。

「おー! じゃあおっさんカートやろう!」

「着替えてくるからゲームつけといてー」

「はいよ!」

 エプロンを畳み、2階にある自室へ向かう。

 妹に突進された流れでそのままキッチンへ行ったから制服のままだった。

 適当なシャツとズボンを履いて下に降りると、妹は準備万端みたいで先に始めていた。


 妹とゲームをすると、勝敗はいつも五分(ごぶ)か妹の方が少し勝ち越している感じだ。

 これは決して私がゲーム下手なのではない。むしろ負けず嫌いなのでめちゃくちゃ練習したし、裏技や小技などもバッチリだ。

 だけど、ゲームってのは楽しくないといけない。私が圧勝して妹が楽しいわけがない。逆に弱すぎても、それはそれで楽しいかもしれないが面白みに欠ける。

 同じくらいの実力か、自分の方が少し上手いと思わせるのが1番良い。そのためにこのゲームを練習したんだ。

 あからさまな手加減なんてされたら鈴は怒るだろう、でも私くらいの腕前があれば自然に負けることもできる。

 そんな事、鈴は知らなくていい。ただ一緒に楽しく遊べるだけで私も幸せだから。


「鈴は、学校に友達たくさんいるの?」

 今まで鈴の学校生活について詮索(せんさく)した事はなかった。逆に聞かれた時、私ができる話は無いからだ。

「姉ちゃんと違っていっぱいいるよ! お昼休みにみんなでドッチボールとかしてる」

 姉ちゃんと違っては、その通りだけど一言余計だ。

 小学校の20分くらいしかない休み時間でも、体育館に移動して遊ぶんだから小学生は本当に元気の塊。

「楽しそうで良かった、ケガしないように気を付けなね」

「姉ちゃんは? 友達できたんでしょ?」

 咲百合とはほぼ毎日、あの公園で手を繋いだりしながら会話をしている。特筆するような話はなく、趣味の話や学校の話。

 まぁ私からのお願いで、校内では会話していないけど。

「この前ね、カラオケ行ったよ」

「おお!! 楽しかった?」

「うん、ずっと話してた」

「歌えよ!!」

 鈴はケラケラと笑いながら楽しそうにしている。


「私、これからもたまに友達と遊びに行ったりすると思う」

「うん」

「だから、今までより一緒に遊ぶ時間減っちゃうかも」

 鈴は寂しがるかな、急にこんな事を言って今まで心の隙間を埋めてくれていた鈴に申し訳がない。

「姉ちゃん……」

「鈴」

 ごめんという言葉よりも早く鈴の口が動いた。

「私と遊べなくなるのが寂しいんだろー! そろそろ妹離れしろよー!」

 9歳の妹から、妹離れしろなんて言われるとは。

 でも、それもあるのかもしれない。

 初めて出来た友達、大事な存在。そんな咲百合と、もっと仲良くなりたい遊びたい。でも、その結果鈴と遊べなくなるのは正直寂しかった。

「鈴は、寂しくない?」

 痩せ我慢しているようには見えないけど聞いてみる。

「えー、ちょっとだけ寂しいけど。お家には帰ってくるでしょ? 夜だって遊べるもん」

「確かにね、夜は遊べる」

「それにー、その友達連れてくれば姉ちゃんとも遊べるし、私も友達と遊ぶ日は多いし。やっぱり全然寂しくない」

 なんと言うか、そういう所は大人だな。

 きっと、心の支柱が私よりも多いのだろう。

 この歳で私を気遣って喋っているとは思えないし、幼心(おさなごころ)の真っ直ぐな気持ちだと思う。


「鈴は立派だなー、でもね。お姉ちゃんは何があっても鈴の事が大好きだから、もし遊べない日があってもずっと大好きだからね、忘れないでね」

「そんな事知ってるしー!」

 いーっと歯を見せつけてくる鈴の顔は少し照れているようにも見えた。私も少し恥ずかしい事を言っているとは思う。

 だけど、もうすぐ10歳になる。あと1年……早くて半年もしたら、こんな風にベッタリとくっついて来なくなるかもしれない。

 私は反抗期とかしている余裕も無かったし、家だけが唯一安らげる場所だった。

 最近は咲百合と居る時間がすごく楽しくて。だからこそ、家での時間も同じくらい大切にしたい。

 膝の上で子猫みたいに甘えてくる鈴は、近いうちに見られなくなると思ったから。


 外から車の音が聞こえて鈴と目が合う。

「お母さん、帰って来たね」

「だね!!」

 今回は、自分でも分かった。

 今の私は楽しい時の表情をしている。

「さっき私にやったみたいにさ、2人でおかえりーって突撃しようか!」

 鈴の顔が今日1番の輝きを放つ、きっと私の顔も。

「いいねそれ!! 早く行こ!!」

 最近の私は間違いなく楽しい。家でもこうやって自覚できるのは、楽しさを教えてくれた家族と、友達のお陰かもしれなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ