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凛と咲き誇る百合の花  作者: イチノセ
第3章 テスト勉強
20/50

第20話 女同士でも恥ずかしいよ!

 まだ夏になっていないが、春でもない。セミは鳴いていないが、桜も咲いていない。

 中途半端な景色だけれど、お陰で部屋の気温は丁度良かった。

 丁度良かったハズなのに、わたしの身体(からだ)は真夏のように火照(ほて)っていた。

 その暑さを飛ばすために、今制服のブレザーを脱ぎかけている。


 なんて、暑さのせいにすれば脱ぐのが正当化されるかと思ったけれど、同じ性別の可愛い女の子に見られながら服を脱ぐわたしはどう見てもただの変態だった。

 そもそも暑いのもこの状況のせいなので、脱いだところで余計に暑くなるのは分かっていた。


 学校指定のネクタイを外し、スクールシャツのボタンに手をかける。普段の着替えよりも時間がかかっている、これ一気に脱いだ方が恥ずかしくないんじゃないかな。

「キャミソール……黒色なんだね」

 わたしの脱衣していく様子をずっと見ていたいろはちゃんが、その熱い視線で見たままの感想を伝えてきた。

「透け防止……だから」

 黒が1番良いと思ったから。

 お互いが場の空気を和ませようと口を開くけど、緊張した声色は余計にわたしたちを無言にさせた。

 というか、いきなり裸を見られるより1枚ずつ脱衣していく方がよっぽど恥ずかしい。せめて後ろ向いて脱げば良かった。いやそれだとめっちゃ恥ずかしがってるのがバレてしまう。

 あくまでも済ました顔でわたしのおっぱいを見せつけよう、堂々としていれば恥ずかしいことなんて、無い。

 わたしの胸を守ってくれていたブラを外し、地面に置く。

 か、隠したりはしない。手は宙ぶらりん。

 なんでわたしは同級生で同性で、友達の前で半裸になってるの?

 冷静になるとこれって普通じゃないと思う。女の子同士だからってこういう事するのは違うと思う。


「お、おぉ……」

 し、真剣に見すぎだよ、いろはちゃん?

「あたしのよりは大きいけど……巨乳って程でもない……」

 なんか吟味(ぎんみ)されてる? 巨乳じゃないは余計だよ?

 予想以上の恥ずかしさに、糸で縫ったかのように瞼が開かなくなる。

「形、綺麗」

「あり、がとう」

 時間にしたら20秒経ってないと思うけど、体感は1時間に感じられる。

 耳がキーンとなるほど静まり返った部屋で、たまに聞こえてくる息遣いはどちらのものか分からない。


 は、恥ずかしすぎる。そろそろ終わ……「ひゃ!?」

 指の感触が直に感じられて思わず変な声を上げてしまった。

「ちょ、ちょっと待って! 触るのはダメ!」

「あ、ごめん。つい」

 結構思いっきり触れられたような気がする。目閉じてて見えなかったけど、人に触られるのってこんな感じなんだ。

 くすぐったいだけで気持ち良いとかは分からない、とにかく恥ずかしい。


「も、もういいでしょ。着るからね」

 まるで逆再生のように、ぎこちなく服を着ていく姿はすごく滑稽に思えた。

「……柔らかかった」

 いろはちゃんは、何かの感触を思い出すかのように自分の指を見つめていた。

 こんなの完全に違うよ……多分、友達とのじゃれ合いより1歩先の展開だよ。

 いや、でも、漫画とかでも女同士で胸揉むのとか見るし、別にこれくらい……。

 そうやって自分に言い聞かせないとおかしくなってしまいそうだった。


「こ、これで同点だからね」

 イーブンどころか、わたしの方が更に点を取られた気がするけど、いろはちゃんが満足そうだからもういいや。

「うん、ありがとうございました」

 今回は別に脱いでいなかったいろはちゃんも、顔を赤くしてお礼を言ってきた。そっちもしっかり恥ずかしがってんじゃんか……。

「なんで敬語……テスト勉強の続きしよ」


 机に向き直りノートへ視線を落とすが、明らかに部屋の雰囲気が脱ぐ前と違う。

 無言の時間がまるで空中に座ってるかのように落ち着かない。これじゃテスト勉強に集中できない。

 いろはちゃんも何故か目を合わせてくれないし。

 えーと、何か話題を考えないと。

 そうだ、少し聞いてみたい事があったんだ。


「いろはちゃんって、り……結月さんの事どう思う?」

 わたしの口から予想外の名前が出てきて、いろはちゃんの元々丸いお目目が更に丸くなる。

「え? 結月さん……?」

 凛ちゃんがクラスメイトにどう思われているか、聞かなくても想像できるけど。学校じゃ聞けない意見も今なら聞けるだろう。

「そう、結月さん」

 いろはちゃんの顔が少し歪む、あんまりその名前を出したくないと顔に書いてあった。

「うーん、やっぱり怖い。この前もすごく睨まれた」

 多分目付きが悪いだけだと思うけど、普段喋らない相手だし、酷い噂も多いし。そう思われてしまうのは当然か。

「ゆりりんは先月話しかけてみたり、保健室に連れてってもらったりしてたけど……どうだった?」

 凛ちゃんは優しい人だったよ。そう伝えるべきなのに。


『私は優しいと思われるのが怖い』

 あの時の凛ちゃん本当に辛そうな顔をしていた。

 やっぱり本当の事は伝えられない、せめて少しずつでも優しい部分を知っていって貰えれば、クラスに馴染みやすくなるかもしれない。

「結月さんは……わたしは怖くないと思うけど」

 いろはちゃんの顔は変わらなかった。

「ゆりりん、結月さんから何か口止めされてる?」

「……え?」

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