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プロローグ

 ――”汝、契約を求める者よ”。

「…………めへぁ?」

 ――”人間界にて、召喚の呼び声を聞き届けたり”。

 魔界の最下層にある寂れたボロ屋の一室で、突如その”声”は響いた。

「うそ、本当に選ばれたの?あたしが?」

 動揺を隠せなかった。これは魔界以外の異世界から召喚される時に聞こえる”魔王の呼び声”だ。ずぅっと昔に、友達だった悪魔が召喚された時のを隣で聞いたっきりだけれど。

 

 急いで食べかけのリンゴを齧る。

「はむっ……人間界ってことはつまり……んぐ……そういうコトよねぇ、んぁー着替えないとじゃん!」

 あわてて立て掛けの悪いクローゼットを開け放ったが、”召喚用”と名札に書かれた衣類カゴは奥まったところにあってすぐには取れない位置だ。こんな事ならもっと取り出しやすいとこに置いとくんだった……!

 

 ――”仮の契約は成された。汝、真に混沌を望むならば……己の欲望に従い、心のままに行為せよ”。

 

「……仮ぃ?」

 さっきまでやる気で満ち溢れていた心が(かげ)ってゆく。召喚の仮契約というのは聞いたことがない。

「……大丈夫かな、これ」

 さっきまで着ていた寝間着を脱ぎ散らかしながら、急いでよそゆきの一張羅に着替える。

「やっぱりあたしには……ううん、でも……」

 悪魔は不安を口にした。しかし、またいつ掴めるかも分からないチャンスを手放したくはなかった。


 もう、あたしにこんなチャンスは巡ってこないだろうから。


 やがて視界が暗転し始め、身体が宙に浮き始めた。

「うっ、うぇ……召喚される時ってこんな感じなの……お腹ぐるぐるする、食べたのでちゃいそう……」

 不快感を堪えながら考えを巡らせる。どんな人間に召喚されるんだろう。”望み”があるなら叶えてあげなくちゃいけなきゃだし。色仕掛けってどうやってやれば……はぁ、やっぱりダメかも。

「メヘヘ、優しそうな人間がいいなぁー……」

 

 バシュゥッ。


 ――刹那、空間が捻じ曲がり、落ちこぼれの悪魔は飲み込まれた。


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