ドレイ体験 これが千年王国の実態だ
戦いに敗れた俺は、その後、いずこともわからぬ場所に運び込まれた。
そして、俺は千年王国の建設のためのドレイとして、働かされることになった。
ここはどこなんだ・・・?
まさか、ドレイとして働かされるなんて、それを実体験することになるとはな。
ここがどこなのかもわからないまま、そして、何をやらされているのかも、一切情報を聞かされないまま、ただわけもわからずに作業をやらされる。
そうして、心が、体が、壊されていき、
死んだような目をするようになる。
「はたらけー!はたらけー!」
監視役のテンプルナイトたちの声と、ムチをたたく音だけが響き渡る。
もしかして、ここは本当に死後の世界なのではないか?と思い、ほっぺたをつねってみたら、痛い。感覚はある。
ここが、千年王国の建設現場。ただ、今はまだ、ほとんど何も出来上がっていないようだ。
石切場から石を切り出して、運んでいく。
空気が薄い。どうやら相当、標高の高い場所のようだ。
「今日の作業はここまでだ。」
ようやく作業が終わったようだ。話を聞いてみることにした。お互いに顔も名前も知らない同士だが。
「ここには、千年王国のシンボルである神殿が完成する予定らしいですよ。ただ工期が大幅に遅れて、作業を急がせているらしいですよ。」
そして、寝る時間。ろくに食事も与えられない。ひどい食事だ。風呂にも入れてもらえない。とりあえず、もう寝ようか。
眠りについたら、また明日を迎え、また作業が始まる。しかし、疲れきってしまい、眠い・・・。
そして、翌朝を迎えた。
あるドレイが死んだ。死んだドレイは棺桶に入れられ、近くを流れる滝から、はるか下に落とされるという。
そのまま、滝の流れにのって、はるか下流まで流されるという。
そして、俺も死んだ。俺の死体も棺桶に入れられ、滝の下まで落とされる。
そのまま、滝の流れにのって、はるか下流まで流されてゆく。
気がつくとそこは、またまた、俺の知らない場所だった。
俺の荷物、所持品もまとめて棺桶に入れられ、流されてきたようだ。
「ああ、気がついたのですね。ここは下流の、名も無い修道院。」
どうやら、ここは下流にある名も無い修道院で、この人は、この修道院のシスターだという。
この修道院の近くには川が流れ、時折、上流からドレイの死体の入った棺桶が流れてくるという。
「まさか、生きている人が流れ着いてくるなんて。」
このシスターは、俺の素性など知らない。
いや、知らない方がいいんだ。
まさか、悪魔に魂を売った、人殺しの人外の俺が、神に仕える修道院のシスターに、命を救ってもらうなんてな。
ところで、大司教のウリエルが破壊した、あの赤い宝玉のかけらは、世界各地に散らばったらしい。
そして、サマエルはその赤い宝玉のかけらを使って、世界各地を侵食し始めた。
何が正しくて、何が間違っているのか、俺の判断だけでは、わからなくなっていた。
とりあえず、今は頭の中を整理するのと、体の傷と心の傷とを癒すため、この修道院にお世話になることにしよう。




