町の様子を見に行く
エンタメランドには、教団の教えはさほど浸透しなかったようだ。
高見の見物だけしていても退屈だ。町の様子を見に行くことにした。
新たに『町の様子を見に行く』コマンドが追加された。
実際に、俺の作った町を、俺の足で歩き回ることができる。
普通に町を作るのもいいが、もしも、こんな町を作れたら、たとえば、同じ職業の者ばかりの町とか、亜人と呼ばれる者たちの町とか。
いつの間にか、地下室ができていて、その中には、棺と墓があるという。おかしなやつらが住み着きそうだと、ある人間の男の住民が言っていた。
すると、あるラーメン屋にたどり着いた。
『ケンタウロスと、ゆかいな仲間たち ご予約済』と書いてあった。
カウンター席があるが、真ん中の3つほどは、貸し切りのようだ。
「いらっしゃい。」
俺はとりあえず、ラーメンとギョーザを注文した。
そこに、ケンタウロスと、なんとガイコツとゾンビがやってきた。ガイコツとゾンビは、ケンタウロスのお供だという。
おいおい、ガイコツとゾンビなんか飲食店に連れてきて、メシがまずくならないか?と、内心思っていた。
ケンタウロスは、上半身が人間、下半身は馬という。そして上半身には立派な鎧と、かぶとを装備していた。
ケンタウロスが、そのかぶとを取る。
すると、なんとケンタウロスは女の子だった。
ピンクの髪で、髪型はセミロング。
彼女の名前は、エルサというらしい。
エルサ「ラーメンとギョーザください。」
店主「エルサさん、いつものだね。」
彼女は迷わず、ラーメンとギョーザを注文した。どうやらこの店の常連客らしい。
ガイコツとゾンビも、同じものを注文した。
ガイコツ「おなかがすいた、腹ペコだ。」
ゾンビ「早く早く食いたいな。」
不思議に思ったことがある。ガイコツは、食べたものどこへ行くのだろうと。
まあ、ガイコツも、ゾンビも、元人間なのだから、生きている人間と同じように、食べ物を食べたり、飲み物を飲んだりすることができるらしい。
エルサ、ガイコツ、ゾンビは、会話をしながら、食事をする。俺はその横で、黙々とラーメンとギョーザを食べていた。
ガイコツ「我らの大魔王ルシファー様は、大したお方だな。どんな種族も、どんなに役立たずと思われているやつでも、たとえ罪を犯したやつでも、受け入れて、共存共栄というやつだ。」
ゾンビ「ルシファー様こそ、我々のための救世主だ。
それにしても最近は、俺たちは、相手の息の根を止めなくても、噛みついて、エキスを注入するだけで、ゾンビ化して、新たな仲間を増やしていくことができるのだからな。」
エルサ「でも、気をつけてよ。教団の神官たちは、破魔の魔法を使ってくるから、アレをくらったら、一発で成仏させられちゃうよ。」
回復魔法でもダメージくらうアンデッドにとっては、食事と、棺の中での睡眠が、体力回復になるという。
エルサが、俺に気づいた。
「あら?もしかして、あなたがこの町を造ってくれた人なの?」
「はい、そうです。俺が教団のステージボスを、アクションモードで倒して、町を造るきっかけを作ったんです。」
なんてかわいいんだ。初めて、サキュバス以外の女をかわいいと思った。
これはもしかして、恋というやつか?
今まで戦いにしか目が向かなかった俺の中に、恋の感情が芽生えるとは。




