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02、タイムリープ

自分の妄想を小説にしたような感じです。

まったりと読んでいただければ。


 6時間ほど車を走らせて洞窟の近くに着いた。

 まずは現場を確認しなければならない。例の場所は洞窟に近い場所だった。車で1時間くらい走ると、その山に到着した。

 ふもとの駐車場の奥に軽自動車を停めて山道を登る。

 息を切らせて30分ほど歩くと例の場所にたどり着く。夢で見たというか、タイムリープしたときの風景と全く同じ。草の茂り具合も変わっていないので、そんなに日にちは離れていないのだろう。

 辺りを歩き回ると、茂みの奥に細い横道があった。草で隠れているので、よく見ないと分からない小道だ。これは使えるか……。

 山道を降りて駐車場に行き、車で洞窟に向かった。


 装備を整えて洞窟に入る。

 休みながら歩いて、やっと鳥居の前に来た。

 深呼吸して心の準備をしてから俺は鳥居に入った。


  *


 暗闇から一気に明るい場所に。

 さっき下見した場所と同じ山道に立っている。

 道の先を見ていると、草をかき分けてパンチパーマの男がやってきた。

「これを持っていろ」

 お金が入った鞄を俺に押しつける。

「あ、ちょっと」

 逃げようとしていたヒロシは立ち止まって振り向いた。

「とりあえず預かっておけ」

 俺は返答に困って口ごもる。

 ヒロシは眉をしかめて、走り去って行った。

「急がないと」

 鞄を抱えて茂みの中に隠れた。

 しばらくすると4人の男が駆けてきて、俺に気づかずに通過していく。

 体の力が抜けて草の上にへたり込んだ。

 鞄のチャックを開けるとビニール袋に入っている、たくさんの札束。

 鼓動が早くなり、呼吸が荒くなった。

「とにかく、逃げなくては」

 立ち上がって小道を早足で歩く。

 少し歩くと、道から離れたところに小さな小屋があった。

 そこで休もうか迷ったが、そのまま進む。

 前方から誰かやってきたので、あわてて立ち止まった。それは作業着姿の老人だった。腰に鎌を下げているので、畑の草刈りにでもやってきたのだろう。

 ホッとして、また歩き始めた。

 すれ違うとき、老人は俺のことをジロジロと無遠慮に見る。俺は構わずに早足で通り過ぎた。

 しばらく歩いたら体力の限界に達する。60歳を越えると基礎体力が著しく低下するのだ。若い頃には考えられないほどの弱さ。それに10キロもの荷物を持っている。

 俺は道ばたに座り込み、太い木にもたれ掛かった。

 荒い息が収まってきたとき、ポケットからスマホを取り出す。今の日時は5月30日の15時半だった。

 鳥居に入る前は23日だから、1週間後の未来にタイムリープしたのか。

 だが、どうして、この日時に来たのだろう。

 前は交通事故の場面にリープした。そして、今度は拉致される事態だ。つまり、俺にとって重要な出来事が起こる場面に飛ぶのだろうな。それを誰が決めているのか知らないが、私にとっては有益なことに違いない。


 そろそろ行かなければならない。そうは思うが体が重くて立ち上がる気力が起きなかった。

 早く駐車場の車に乗り込んで山形に帰りたいのだが。

 深呼吸をして顔を両手でゴシゴシとこする。俺はユルユルと立ち上がった。

 さて、歩き出そうかと思ったとき、後ろから人の声が聞こえてきた。

「あいつだ。あいつに鞄を渡したんだ!」

 ヒロシの声だった。

 見ると手を結束バンドで縛られている彼が両手で俺を指し示していた。その周りにはヤクザ風の男達。

 ヒロシは、もう捕まってしまったのか。

 俺は鞄を放り投げて走り出す。

「追いかけろ!」

 黒スーツの男の声が後ろから聞こえてくる。

 しばらく走ったら体力が悲鳴を上げた。俺は道にへたり込む。

「逃げんじゃねえよ」

 男達から肩を強くつかまれて両腕を固定された。

「よし、車に連れて行け。事務所に帰ったら、きっちりと締めてやる」

 見上げるとスーツの男がサングラス越しに俺を睨んでいた。


  *


 鳥居の前で目を覚ます。

「ああー、ダメだあ」

 両手で支えながら上半身を起こした。

 どうして上手くいかないのか。小さな山だったから、逃げ道は限られている。だから、のんびり休んでいたら捕まってしまうのだ。

「まあ、いいか」

 失敗したらやり直せば良い。何度もループして最適解を探すのだ。


 しばらく休んで動揺が収まってから、立ち上がって鳥居に入った。

 だが、今度は何も起こらずに鳥居を通過してしまった。ヘルメットのライトに照らされた薄暗い洞窟の奥が見える。

「あれ?」

 一日に何度もリープはできないのか。1日か2日経たないとタイムリープの準備ができないのだろうな。

 仕方なく、洞窟から出ることにした。


 予約しておいたホテルに一泊して、朝食を食べたらすぐに、例の事件が起こる山に登った。

 鞄を押しつけられる道まで上る。

 そうだ、あの小屋に行ってみよう。あそこなら鞄を隠しておくことができるかもしれない。

 細道に入り、100メートルほど進むと小屋が見えてきた。

 その小屋は扉にかんぬきが差してあり、それを抜くと扉を開けることができた。

 3畳ほどの小さな部屋。中にはクワやハンマーなど農具と思われる物が置いてある。小さいガラス窓があったが、小屋は隙間だらけなので、そこから外を覗くことができた。

「ここに隠すか」

 中はホコリだらけで、人が入った形跡がない。

 小屋を出て俺は、ふもとの駐車場に歩いていった。


 近くのコンビニで昼食を買って車の中で食べた。

 それから、車を洞窟の近くに停め、そこから歩いて洞窟の中に入っていく。また1時間くらい穴の中を進んで鳥居の前に来た。

「今度はしくじらないぞ」

 頭の中で自分の行動をシミュレーションしてから、大きく深呼吸。覚悟を決めて鳥居に進んだ。


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