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プロローグ:始まりの夜に
≪プロローグ≫
それは、雪の降る寒い夜のことだった。
頭に白い頭巾をかぶった、いかにも使用人然とした女性が、籐籠を胸に抱いて、ゆっくりと歩いている。
瞳には涙を湛え、ごめんね、とつぶやきながら。
彼女はある建物の入り口にそっと籠を置き、中のものを抱き上げた。
果たして、それは生まれて間もない赤ん坊であった。
「ごめんね、レン。強く生きてね。」
彼女は最後にギュッと赤ん坊を抱きしめ、籐籠に戻した。
そして懐から幾ばくの金貨と、2通の手紙を籐籠に入れ、雪がかからないよう、かぶっていた白い頭巾を外して、そっとかぶせた。
「あなたはあの人の子よ。きっと強くなるわ。強く、正しく生きてね。」
彼女は名残惜し気に何度も振り返りながら、吹雪の中立ち去って行ったのであった。