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9 特訓4


「僕も尊敬されたい兄様だから僕はマルク兄様の捕捉説明をしようかな。」


 ヨアン兄様はそう言って話に入って来た。


「マルク兄様の魔力量はこれでも同年代と比べると多いんだ。」


「そうなんですか?」


「そうなんです。魔力は使い切れば総量が増えるのはさっき聞いただろう? それでも限界はある。始めからほとんど増えない人もいれば、逆にずっと増え続ける人もいる。そして1度に増える魔力量も人それぞれなんだ。マルク兄様は1度に増える量は少なかったんだけどそれでも努力し続けて今みたいになったんだって。魔力量なら学年1位らしいよ。」


「マルク兄様って凄いんですね。」


「そうだろう? しかも操作技術なんかも優れていて魔法戦闘なら学年1位どころか学園1位なんだよ!」


「そうなんですか、マルク兄様?」


「まぁ去年の学園内の模擬魔法戦では優勝したね。」


 初耳である。


 学園内の模擬魔法戦と言うと学園祭での勝ち抜き戦だろうか? 全学園生の魔法戦といえばそれしか考えつかない。


「そんなものがあるんですか?」


「ああ、学園祭の競技の一つでね。参加希望者が事前に予選をして上位64名が当日に勝ち抜き戦をするんだ。」


 正解だった。


 そうなると去年上級生まで負かしたようだ。魔力量は下級生には負けないだろうから現在名実共に学園1位なわけだ。


「マルク兄様って凄かったんですね。初めて知りました。そんな方にご指導いただけて嬉しいです。」


「これが僕らの自慢の兄様だよ。」


「これからも自慢でいられるように頑張るとするよ。」


 そう言ってマルク兄様は照れた表情で笑った。


「さて、これでとりあえずできることはおしまい。次回はアルフが魔力の放出に慣れるまではお預け。アルフにはこれをあげよう。」


 マルク兄様はその言葉と共に先程使った魔石と同じものを取り出した。


「これはなんですか?」


「これは練習用の魔石だよ。これには魔力を留める加工をしていない。初めのうちはものには流せても自分で放出するのは難しい。これに魔力を流して徐々に自分で放出できるようになるといい。あぁ、それと長く流すことが目的だから魔力は空にしない方がいいよ。」


 用意の良い兄様である。今日突発的に言い出したというのに。


「ありがとうございます。これから頑張って兄様達の長期休暇中に慣れたいと思います。」


「楽しみに待ってるよ。それじゃあみんな解さ「にーさまー!」


 マルク兄様が解散の指示を出そうとしたその時、シャルが乱入してきた。


「こら、シャルロッテ。部屋に入る時はノックをしなさい。」


「はい。ごめんなさい、マルクにいさま。」


 兄様が優しく叱るとシャルは素直に謝った。シャルは基本いい子である。


「分かったならいいよ。どうしたんだい?」


「にーさまたちみんなであそんでずるい! シャルもいっしょにあそんで!」


「別に僕たち遊んでたわけじゃないよ?」


「じゃあなにしてたの?」


「アルフのお勉強だよ。」


 ヨアン兄様がそう答えたらシャルはたちまち顔を曇らせた。


「シャル、じゃま?」


 シャルが悲しそうなので当事者の私が否定することにする。


「そんなわけないよ、シャル。丁度今終わったところだったんだ。」


「ほんと……?」


「本当だとも。」


「じゃあシャルと遊んでくれる?」


「勿論だよ。」


 そう答えるとシャルは心から嬉しそうな満面の笑みを見せてくれた。やはりシャルは笑っているほうがいい。


「兄様達も大丈夫ですよね?」


 私は笑顔を浮かべながら兄様達にお伺いをたてた。


「アルフ……? なんか怖いよ……?」


「怖くないです。さぁシャルと遊びましょう?」


 何故かヨアン兄様は及び腰である。


「そうだな! 遊ぶか!」


「やったー!」


 フランク兄様の言葉を皮切りに全員が了承した。



 この後めちゃくちゃシャルと遊んだ。






・・・・・






 ところ変わって中庭、昨日のことなど無かったかのように綺麗になっていた。


 朝食を食べた後動きやすい服装へと着替えてフランク兄様と共に中庭へやってきた。


 昨晩マルク兄様が父様に起こった出来事の詳細を話していたようだが、特に朝食で何かを言われることはなかった。全てはマルク兄様に任されたのだろう。


「さて、アルフ。昨日シャルと遊び過ぎて筋肉痛とかないだろうな?」


「? いたって健康です。やる気が補充されたくらいですよ?」


「……そうか、なら始めるぞ。」


 何か言いたげな顔をしたフランク兄様は木剣を持ち、私にもそれを渡して来た。


「剣術を教えるって言っても剣術なんて実践あるのみだ。基本の型は教えるが、型通りに動かなきゃいけないことなんてない。好きに動け。まずは避けるだけでもいい、打ち合うぞ。」


「型は後でいいんですか?」


「今やってもすぐ体が動くわけじゃない。ずっと素振りなんてやってたら教える時間なんか無くなっちまう。だからとりあえず打ち合って体を慣れさせる。対人を少し経験するだけでも素振りのとき想像しやすくなるし俺の太刀筋から学べることもあるだろう。」


「なるほど、分かりました。」


「しばらくはなるべく見えるようには振るからそれを避けろ。出来るなら反撃してもいいぞ。」


 フランク兄様はそう言って木剣を構えた。


「それじゃ、行くぞ!」


 フランク兄様はまず上段から斬りかかってきた。私はそれを木剣で防いだが、力負けしてバランスを崩してしまった。


「アルフ、お前の体格じゃあまだ防ぐのは難しい。それに受け流すのも無理だ。だからなるべく避けるように。その上で反撃を考えろ。」


 そう言われて頷くとフランク兄様はもう一度上段から斬りかかって来た。

 私は今度は言われた通り左に避けた。


 次にフランク兄様は中段で木剣を私に向けて付き出した。これを私はあわてて慌てて右に避けた。


 兄様はそれをそのままこちらへ向けて横薙ぎに振って避ける際に態勢を崩していた私は避けられず腕に当たった。ゆっくりではあったので痛くは無かった。


「次に相手がどう動くかも考えながら避けろ。」


「はい、フランク兄様。」



 それからしばらく打ち合って……いや一方的に打たれているとフランク兄様が終了を言い渡してきた。


「じゃあ素振りするぞ。」


 そうして私はフランク兄様に降り下ろし、横払い、突きの3つの型の素振りを教わった。


「これからは2日に1回打ち合うことにする。素振りは毎日欠かさずやるように。今日はここで終わり。昼飯まで少しあるから着替えてから来るといい。俺もそうする。」


 そうフランク兄様が言うのでこの場は解散となった。


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