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4 待っていて下さい


 どのくらい凝視し続けていたのだろう。


 マルク兄様が私の肩に手を置いた。


「どうかしたのかい?」


「いえ、美しいご令嬢だなと思いまして見惚れてしまっただけです。」


 私は慌てて取り繕ったので半分本音が混ざってしまった。


 するとマルク兄様は優しく笑った。


「2年半後の学園では関わることもあるだろう。今日しっかりと顔を繋いでおきなさい。」


 マルク兄様は気づいたのだろうか?


 私のこの胸の内を。


 いいや、どちらでも構わないか。


 だから僕は一言、

「ありがとうございます。」

と返した。


 しばらくして公爵様の話が終わったようで、公爵様の周りに人が集まり始めた。


 私達も挨拶に行くのだが、家の爵位や規模、公爵様との関係で大まかに決まっている。


 私達は後半なので、少しの間家族と談笑しながら待っていた。


 しばらく経つと人はさらに増え、もう公爵様は見えない程になっていた。


 そんな中、父様も動き出した。人混みの後方へ位置取り、私達の番が来るのを待っているようだ。


 やがて見えなかった公爵様も見えるようになってきた。

 必然、彼女も視界に入るようになった。


 久しく感じていなかった胸の鼓動を感じる。 


 やはり、()()の自分は生きながらにして死んでいたのではないのか。


 そう思ってしまうほど今の私の胸は踊っていた。



 そうして私達の番が回ってきた。


「お久し振りでございます、デンロドン公爵閣下。

そしてお初にお目にかかります、アザレア様。

リプトンス家当主アジュガ・リプトンスでございます。」


「久しいな。リプトンス」



 そうして少し会話をした後母様、兄様、私の順で紹介された。


「こちら、四男のアルフレッドです。」


「お初にお目にかかります。デンロドン公爵閣下、アザレア様。レプトンス家が四男、アルフレッドでございます。この度はアザレア様の10の誕生日心よりお祝い申し上げます。

 私事ではございますが、私も今年10を迎えましてアザレア様のご学友となる前に先じてご挨拶させていただきたく参りました。」


「そうか。アルフレッドよ、娘の良き学友となることを期待する。」


「その御言葉、ありがたく頂戴いたします。」


 そうして挨拶を終えるとアザレア様が一言、

「よろしくお願いしますね。」

とおっしゃったので私も、

「こちらこそよろしくお願いいたします。」

と答えた。



 そうして挨拶を終えてしばらくすると他家の挨拶も終わり、各々の家への挨拶を再開する家や他家との親睦を深める家等別れ始めた。


 私達は交流のある家との挨拶を再開するようだ。


「アルフ、私達はこれから他家の方々へ挨拶をしてくる。君は同年代の子供達と交流を深めて来るといい。」


「分かりました、父様。」


 そう父様に言われたので私は子供達で集まっている場所へ向かった。


 そこはアザレア様を中心に輪を作りながら歓談しているようだった。



 私は身分的にアザレア様に話しかけることは出来ない。


 彼女の周囲には私より身分の高い子息令嬢ばかりである。


 そのため私は私と同じように弾き出されてしまった方々と親睦を深めることにする。


 それはそれで有意義な時間ではあったが、誓いを立ててそうそうこれでは拍子抜けであろう。


 それでも今回はこれで終わるつもりは毛頭ない。


 だが、彼女に釣り合わない今の私ではこの状況を甘んじて受け入れなければならない。



 今は、まだ。






・・・・・






 だから……だろうか。



 思わず呟いてしまったのは。






・・・・・






 つい先ほど私に向けて誰かがお話していたような気がします。


 今周りでお話している方とは違う声が聞こえたのです。


 でもやっぱり気のせいですね。


 だって、そうでなければおかしいですもの。




 待っていて下さい……だなんて。




 何を待っていれば良いのでしょうね。


 ふふふっ。


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