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2 家族


「おはようございます。アルフレッド様。」


 ノックと共に入って来たのは知った顔だった。


 現在混乱中のために改めて目の前の彼女のことを考えると彼女の事はすぐに分かった。


 彼女の名前はエマ。年は今年で25だったか。彼女は確か18のときに平民から採用されたらしい。3年くらい前に私の回りの世話をするようになった。


 そうやって彼女の顔を凝視していると彼女は訝しげな様子で話しかけてきた。


「どうかなさいましたか?」


「いや、何でもない。おはようエマ。」


「おはようございます。アルフレッド様。」


 そう返した彼女は失礼いたしますと言って朝の支度を手伝ってきた。



 そうかからず支度を終えると彼女は私を食堂まで案内した。


 食堂に着くと見知った、いや見慣れた面々が揃っていた。

 どうやら私が最後だったようだ。


 普段朝の弱い妹よりも今日の私は遅かったようだ。


「おはようございます。お待たせしてしまい申し訳ありません。」


「「「「「「「おはよう(ございます)アルフ(お兄様)」」」」」」」


 そうして家族全員から同じような返事がきた。


 昨日までと変わらないはずなのに全員若く感じる。まぁ正確に言うと兄弟達は幼くなのだが。


 そうして挨拶を終えた後に席につき、食事が始まった。



 食事が終わり、食後に全員で紅茶を飲んでいると父様が全員に向けて話し始めた。


「今日は昨晩も言ったようにデンロドン公爵様のご令嬢の御披露目を含めた誕生日パーティーだ。パーティーへは私とセシリア、マルク、アルフで参加することになる。マルク、アルフ分かっているな?」


 すると長男であるマルク兄様が答えた。


「はい、父様。くれぐれも粗相の無いよう心しておきます。……アルフ、君は今日は朝が少し遅かったようだが、体調でも悪いのかい?」


 するとマルク兄様は私に少し心配そうに尋ねてきた。周りを見ると他の家族も心配そうな顔をしていた。


「いいえ、マルク兄様。緊張してしまいなかなか寝付けなかっただけです。ご心配おかけしました。」


 そう答えるとマルク兄様は安心と納得の入り交じったような表情を浮かべた後、

「それならば良かった。」

と笑った。


 すると、次男のフランク兄様が笑いながら会話に入ってきた。


「アルフはこーゆーパーティー初めてだっけ?」


「そうです。」


「なら緊張するのも仕方ねぇなぁ。なんたってあのデンロドン公爵様主催のパーティーが初めてじゃあな。俺は行けねぇけど、頑張って来いよ!」


「僕も応援してるよ。」


「やっぱり私も付いて行きたいわ。」


「シャルもシャルもー!」


 フランク兄様に続き、三男のヨアン兄様に激励の言葉を頂いた。

 3歳上のリゼット姉様には激しく心配されて同行を願い出られ、よく分かって無さそうな4歳下のシャルロッテもそれに便乗してきた。


「兄様、姉様ありがとうございます。姉様、私は大丈夫ですのでシャルをよろしくお願いします。シャルもいい子にお留守番していてね?」


「シャルも行きたい!」


「今回は事前に行く人数も決めてあるし、どうしても一緒に行けないんだ。ごめんね?」


「むぅー」


 姉様は心配そうながらも引いてくれたけど6歳のシャルはむくれてる。

 でも可愛い。貴族としては良くないかもしれないけれどとっても可愛い。


 さすが我が家の天使の名を欲しいままにいているだけはある。

 場の雰囲気が少し柔らかくなっている。



 しばらくそのままであったが、フランク兄様とヨアン兄様、リゼット姉様がとりなしてようやっとシャルのご機嫌が少し直ったようだ。


 父様が気を取り直した様子で僕に話しかけてきた。


「気負わせるようで悪いが、この中でご令嬢と多く話をすることになるのは同じ歳のアルフとなるだろう。だが、気負い過ぎるのは良くない。普段のアルフのままで良いからな?」


「はい、分かっております。お気遣いありがとうございます。」


「頑張ってね。アルフ。」


 最後に母様からも応援の言葉をいただき、その場は解散となった。



 解散後パーティーのある時間まではまだ時間が出来たので、一度部屋へ戻って今の自分を整理しようと思う。


 自分の体は自由に動かせた。昨日までの記憶もはっきり残っているし、走馬灯の線はもう考えなくていいだろう。


 では今朝のはただの夢か?

 それにしては不可解な点は多い。


 まず初めに挙げられるのは鮮明すぎる点だ。


 それに見たシーン以外の記憶もしっかりとあるのだ。


 さらに知らない知識が増えている点も挙げられる。


 夢でないとしてもただの妄想や何者かによる偽の記憶の植え付け……洗脳の可能性もある。


 …………記憶を保持したまま時間が戻った?


 馬鹿馬鹿しい……そう切り捨てられたらどれだけ良かったことか。何故かは分からない。分からないがどうしてかこの可能性だけが頭から離れない。



 自分の現状は全く理解出来ない。


 だが、()()に会えば分かるだろう。


 ただ漠然とそう思う。


 会った事がないのだから少しは手がかりになるだろう。

 理性ではそんな言い訳じみたことを考えてみるけれどそれらは同時にとてもちんけに思えた。


 ただ根拠もなくそう思う。


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