1 プロローグ
初投稿ですので、暖かい目でご覧下さい。
それは突然のことだった。世界の終わりを感じたのは。
朝目を覚まし身仕度を整え朝食を取る。
朝食を取ったら仕事の準備をする。
いつも通りの朝、いつも通りの行動。それをただひたすらに繰り返す灰色の自分。
何も考えず、何も感じず、同じような日々を繰り返す。それはさながら生きた死体のようだ。
動く死体なら知っているが、今の私はそれと似たようなものかも知れない。
私の時間は止まってしまった。いつそうなったのかは自分でもよく分からない。
だが、無理にそのときを、私の時間の止まり始めを。私が心を置いてきてしまったそのときを決めるのならば。
それはきっとあのときだろう。10歳の時のあのパーティー、そこで彼女を見たその瞬間。その時からきっと私の中の時間は徐々に止まり始めたのだろう。
時間の止まったその中で、私は自分自身に問いかける。
私はなぜ生きているのかと。何のために生きているのかと。
その答えはきっとない。しかし問わずにはいられない。問わなければいけないと"何か"に怯えているように。"何か"もきっとないのだけれどそれでも急き立てられるように。私は私に問い続ける。
そして答えも出ぬまま今日も私は生きていく。―――――そう思っていた。
準備も終え、外へ出て町を歩いていたら突然大地が揺れ始めた。
初めてのことに周囲はパニックに陥っている。私も何事かと思いながらもやはり心は動かなかった。
揺れは徐々に激しくなっていき、周囲では立って居られない人が多数を占めるようになってきた。
さらに揺れは激しくなり、私も立っているのが難しくなってきたところで変化が起きた。
とてつもなく大きな音がしたのだ。
何事かと思い見てみると信じ難い光景が目に飛び込んできた。王都の周囲を囲う壁が破壊されていたのだ。
あの壁は聞いた話によるとドラゴンの攻撃でも簡単には破壊出来ないらしい。
だが、壊れた壁の周辺を見て納得した。
壁の壊れていない場所には翼のあるドラゴン達が鳥のように複数とまっており、崩れた壁からは翼のないドラゴンが覗いていた。
さらには少し先だがワイバーンの群れも見えていた。
当然周囲は呆然としており、我に返った者から我先にと走り出した。
私はこれらの事を認識しながら動く気も起きなかった。なぜなら、これほどの事が起きる前に国の騎士たちが対処しているはずだからだ。
しかし、ドラゴンを見てみると無傷のように見える。
ならば今さら逃げようと無駄であるし、それを抜いても逃げる意欲も戦う意欲も湧かなかった。
そこで私はふと違和感を覚えた。
違和感の正体を探ると簡単にその正体を突き止める事が出来た。
竜種は群れないのだ。
個体ごとが強力な力を持つ竜種は自分以外の生物を見下している。
そのため同種同士でも群れることはない。
逆に群れを作るものは亜竜種と呼ばれ、明確に区別されている。
では今回は亜竜種の群れなのかというと違う。群れを作らないはずの竜種が群れている。
そのあり得ないはずの事が起きている。
それを認識した瞬間ふとした考えがまるで天啓かのように頭をよぎった。そしてそれが事実なのだろうと納得してしまった。
「これが世界の終わりなのだろう」と。
そう納得すると同時に町を破壊し始めていたドラゴンの群れの1匹がこちらを向いたまま、大きく息を吸ったのが目に入った。
やっと終われる、そう思った。
彼女のいないこの世界で生きる意欲はとうになくなっていたのだ。
……あぁ、そうか。
たった今、理解した。
私が生きていた理由は彼女のいなくなったこの世界での生きる意欲が欲しかったからか。
それを理解しないまま日々を過ごしていたのならば毎日灰色なはずだ。
諦めたはずなのに縋り続けて……なんて情けない。
私はそう思いながら目を閉じた。
この目を開けることは二度と無いんだろう。
そして数瞬の後に浮遊感のようなものが襲った――――
・・・・・
……知らない天井だ。
いや、私はこの天井を知っている。というよりもここは私の部屋だ。
昨夜私はこのベッドで眠りについたはずだ。しかし、私は先ほど死んだはず……。
夢……か? そうは思えない程鮮明に思い出せる。
ではこれは走馬灯というやつか?
分からない。
そういえば遠い地にそのような話があると聞く。
確か男の夢の中に蝶が出てきてその蝶は男が見た夢なのかはたまたその男が蝶の夢に出てきているのかどちらが現実か分からないという話だったか。
いや待て、どこでその話を聞いた? 学生の時に教師が授業で言っていたのではなかったか?
では、やはりこれは走馬灯なのだろうか?
今私は3ヶ月ほど前に10歳になったばかりだ。学園に通うのは2年後のはず……ちょっと待て。
10歳の誕生日の3ヶ月後だと? それは……あぁやっぱりだ。今日は彼女の誕生日ではないか……。
「アルフレッド様、失礼いたします。」