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囚われの冒険者

 次に四人が意識を取り戻した場所は一面の荒野の広がる場所だった。

 背後には大きな門を構えた長大な建造物。

 ゼンの第一印象は万里の長城である。

 周りには同じく数組の冒険者たちがいる。

 ざっと数えて三十人くらいだろうか?

 怪我人が多いように見えるのはやはりダンジョンでの合成生物キメラとの戦闘によるものだろう。

 身につけているものは質素な筒型衣チュニックで、四月なはずなのに寒さが身に染みる。

 少なくとも札幌より寒い場所であることは間違いない。

 潮の香りがすることから海沿いのどこかであることも確かだろう。

 そばに置かれた荷車には彼らの装備が一式積まれているようだ。

 他にも食料などが積み込まれている荷車が数台、うさぎや小型の豚などに繋がれている。


(牛、馬の代わりですか……)


 これを見れば彼らがまだ十分の一世界にいることを認識するのに十分だ。

 そんな一団を取り囲むように人造人間ホムンクルスが十二体。

 そのうち一体は隊長格なのだろう、太く節くれだった棍棒クラブを肩に担いでいる。


(さすがに分が悪いな)


 ロムでさえそう思う状況だ。


「これからどうなるんだ……」


 包帯で片目がふさがっている若い男が力なく呟く。


「荷車が門の方を向いていないんだ。追い立てるんだろう」


 四十がらみだろう男が向けた視線の先にはなるほど荷車が作ったらしいわだちが続いている。

 つまりここから何度となく同じような一団がこの先に送り出されているということだ。その行く先は霧深くて何があるのかさっぱり判らない。


「オオウ、オオウ、オオオウッ!」


 突然隊長格の人造人間が叫ぶ。

 復唱するように他の人造人間も叫ぶ。

 同じことが三度繰り返され、隊長の棍棒が一頭の豚の尻を叩く。

 驚いた豚が動き出すと、他の人造人間達が次々と一行を追い立て始めたので、彼らは否応無く出発せざるを得なくなった。

 く家畜のない荷車は協力して曳いて行かなければならない。

 怪我の程度が軽い四人は中心となって荷車を曳き、押して進む。

 誰もが口数少なくただ黙々と歩を進める。

 足の不自由な者には誰かが肩を貸したり、荷車に乗せるなどして助け合う。牛や馬と違ってどう扱っていいかわからない家畜達をどうにか追い立て、出発地点が霧の中に消えて行く。時間感覚がつかめない中どれほど歩いたかわからないが、やがて霧の向こうに城壁のようなものが見えてきた。

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