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崩壊からの帰還 10 見えた光明 掴んだ尻尾

 連絡を受けた蒼龍騎が呼び出された公園に行ってみると、そこにはホームレスらしき男が立っていた。

 警戒心を一気に高めながら近寄ると酒臭い息でニタリと顔を近づけてこう言ってきた。


「蒼龍騎だな?」


「ああ」


「そう緊張しなさんなって。オレは報酬もらえるものさえもらえればそれでいい」


 蒼龍騎は二、三秒黙って男を見つめたあと、大きめのコンビニの袋を差し出した。

 中には焼酎とさかなが入っている。

 それをしつけに目の前で確認すると、アゴでついて来いと合図をする。

 案内されたのは男のねぐら。


「連れてきたぞ」


 男がつぶやくと、ねぐらの中から四人の小さな冒険者が出てきた。

 蒼龍騎の表情がようやく和らいだかと思うと一気にくしゃくしゃに泣き崩れた。


「時間的に言っても場所柄で言っても人に見られることは滅多にないだろうが、感動の再会は適当に切り上げてくれるとオレが助かる」


「ああ、そうだな」


 蒼龍騎が少しムッとした声で言う。

 しかし、ロムにはそれが男の優しさなのに気づいていた。

 そして蒼龍騎がコートのポケットに左右二人づつ冒険者を入れてここ、下町の迷宮亭に連れてきたのだ。


「で? 何か掴めたのか?」


 マスターが珍しくロムを待ちきれずに訊いてくる。


「肝心なところが……」


 ゼンがこの長い一日を掻い摘んで話終える頃、ロムが元に戻ってくる。


「……なるほど、組織の尻尾を掴みかけたところで事故に巻き込まれたってことだな?」


「ええ、せっかくの手掛かりがまた振り出しですよ」


 悔しそうに俯くゼンにココアを受け取ったロムが言う。


「振り出しじゃあない。手がかりは確かに掴んだ。色々とね」


「え?」


 ロムは珍しく雄弁に話し出す。


「まず、組織が存在していることが判った。組織が今でも組織として存在しているってこともね。それも今回のダンジョンからかなりの規模なのが判る。そんな存在、どんなに隠そうとしても隠しきれるもんじゃない」


「そうだな。下町の迷宮亭(ここ)も気づけば七十人規模の組合ギルドだ。どこから情報が漏れているのやら」


 そう言って店長が蒼龍騎を見ると、彼は苦笑いでこたえた。


「店長が調べてくれたダンジョンに今回のダンジョンによく似たダンジョンの情報があっただろ?」


「確実にあるのは北海道、噂では仙台と福岡にもあるらしい……ってアレか?」


「福岡は遠くてまだ確かめられてないが、仙台の方はどうやら存在が確実だ」


 店長が追加情報を補足する。


「つまり、北海道か仙台……次のダンジョンはどちらかに絞るってことですね?」


「北海道に絞ることを提案するでござる」


「なぜ?」


 サスケの提案にゼンが問い返す。


「仙台は少々近すぎるでござる」


 サスケの主張は明確だった。

 相手は下町の迷宮亭のようなカメラやマイクによる観察はしていないが、何らかの手段でダンジョン内の情報をある程度把握していた。

 最後の階層での怪物モンスターの投入があまりにもタイミングが良すぎると言うのが根拠である。


「仙台は警戒される可能性が高いでござるで、北海道に絞ろうと言うのが拙者の言い分でござる」


「なるほど、組織の中で情報共有がどれほどなされているかは推し量れませんが、北海道であれば我々の情報を誤魔化しやすいと言うことは言えますね」


「そうか。じゃあこちらで引き続き情報にあたってみよう」


 そう言う店長に「いえ」とロムが申し出を断る。


「これ以上店長に迷惑はかけられませんよ。ずいぶん下町の迷宮亭(ギルド)を危険に晒してるんでしょう?」


 言われて店長は口をつぐむ。

 先ほど軽口でギルトメンバーが増えたことを他人ひとのせいにして見せていたが、実際には下町の迷宮亭(ギルド)店長マスターの肩書きを使って情報を収集していたことが原因だった。


「店長以外にアテはあるのか?」


 蒼龍騎が聞く。


「蛇の道は蛇だよ」


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