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ラストダンジョン 10 映画でよくある罠の回廊

 怪我人をフォローしつつ戦うにはどういう隊列がいいのか?


「ロム」


「はい?」


「殿、一人で出来そうか?」


「……まぁ、この階層で背後から襲われる可能性はほとんどありませんし、なんとかなるんじゃないですかね?」


 実際、ほとんど一本道であるこの第二階層では、一度も背後から襲われたことがない。


「なら、先頭はコーとヒビキ。次がオレ。三列目にシュウト、サスケ。四列目にジュリー、レイナ。その後ろにゼン、最後がロムの順で行こう。通路で襲われることは少ないと思うが先頭はオレを含めた三人でローテーションすることで少しでも負担を減らそう。部屋に入っての戦闘は今まで通り全員で対処する」


「ジュリーはダメだからな」


 と、ヒビキが念を押すと彼は不満を態度で示すが抗議はしなかった。

 通路は単調に敵が配置されている部屋と部屋を繋いでいるだけであり、その敵はレベルを落としているのかコボルドやオークが配置されているだけという部屋を三つ通過して、それまでの扉とは外装の違う扉の前に辿り着いた。

 扉はそれまでの無骨な、間仕切りとしての機能以上ではない扉と違ってゴシック様式の装飾オーナメントが施された金属扉であり、ドアノブには獅子があしらわれている。

 サスケが扉を調べるが特に罠らしきものはなく、慣れた手つきで手早く解錠するとクロが扉を開く。

 部屋の中に飛び込みかけたクロは危うく大鉈に胴を斬られそうになった。


「これは……」


「映画で手に汗握る見せ場になっているアレですね」


 扉の向こうは部屋というには細長い空間で、幅の広い通路のようだった。

 床は白黒の大理石でモザイク模様。

 入口から三振みふりの大鉈が規則正しく振るわれている。

 その奥には何もない空間が七メートルほど続き、開かれた扉がある。


「……鉈はともかくその先に何が仕掛けられているかが問題だな」


 誰もが唾を飲み込む。

 ロムは大きく深呼吸すると前に出た。


「俺から行きますね」


「ロム」


「多分、俺が一番消耗してないと思うんですよ」


 ミノタウロス戦以降、先頭を担い続けている三人や怪我の程度が他より重いシュウトとジュリーより危機対応に余裕がある。

 という主張だ。


「……判った。任せたぞ」


「じゃ」


 ロムは近所にでも出かけるような気安さで片手を挙げるとゼンからランタンを受け取り、するすると大鉈三本を掻い潜っていく。

 たまたま黒いタイルに立っていたロムは、周りの白いタイルを棍で突いていく。

 一枚が目測半畳ほどの大理石の硬質な音が響くだけで特に変化はない。

 それを確かめたロムは左右に安全圏を広げていく。

 奥行きでタイル三枚分の安全を確かめると、さらに奥へと探索範囲を広げていく。

 白いタイルを調べるときは黒いタイルの上に。

 黒いタイルを調べるときは白いタイルの上に移動する念の入れようだ。

 結果、二枚の黒タイルで発動した全ての黒タイルが蓋のように底抜ける罠をかわす事が出来た。

 そんな神経のすり減る前進を三メートルほど行くと、今度は正面の壁から仕込みの矢が飛んできたが、これを難なくかわすと壁横から槍が繰り出される罠が待ち受ける。

 ロムは一番手前の槍を壁の仕掛けから壊し抜き、その先の槍を間引くように壊して進み扉の向こうに辿り着く。

 天を仰いでフゥと大きく息をついたロムが振り返り、親指を突き立て(サムズアッブし)てみせる。

 クロが続きコー、シュウト、サスケ、ジュリーの順で進んでいく。

 最難関と思われた横槍はロムが間引いてくれたおかげでだいぶ楽にかわす事が出来た。


「ゼン行くよ」


 レイナが辿り着いたのを確認したヒビキがゼンを促す。

 隣にいるヒビキにはっきり聞こえるほどゴクリと唾を飲み込む音がした。

 彼が握っている杖の明かりに照らされた、みて取れるほど蒼ざめた顔には冷や汗が浮かんでいた。


「大丈夫、私がついてるから」


「は、はい……」


 ゼンは二度三度と深呼吸を繰り返し、ヒビキが肩を叩くリズムに合わせて数を数え(カウントダウンし)て罠の回廊を進み出した。

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